研究課題/領域番号 |
23590992
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
松崎 靖司 東京医科大学, 医学部, 教授 (50209532)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10468639)
池上 正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40439740)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
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キーワード | 内科 / ウイルス / インターフェロン |
研究概要 |
慢性C型肝炎(HCV)感染に対するインターフェロン(IFN)/リバビリン(RBV)療法において,血中HCV量による効果判定に加え,肝細胞中のHCV残存を評価する有効な手段を開発する事により,再燃の防止や過剰治療の軽減などが期待される。 昨年度は,HCV感染が肝臓における脂質代謝に及ぼす影響を検討するために,HCV患者血清中の代謝マーカーを,健常者やIFN治療後と比較した。その結果,脂質異化(β酸化)の指標となる血清アセチルカルニチン濃度は,HCV感染患者で健常人より減少しており,IFN治療後はやや改善していた。そのため,肝内HCV感染状態によって,肝臓での脂質異化能が変化していることが示唆された。 この代謝能の低下が肝内HCV残存を評価する手がかりとなる可能性について,今年度は,脂質代謝物に関連する他の血清マーカーについて,検討を加えた。 HCV感染時は,β酸化代謝産物である血清アセチルカルニチン濃度が減少していたため,β酸化反応の基質元となるアシルカルニチンの血中濃度を測定した結果,アセチルカルニチンと同様に,血清アシルカルニチン(パルミトールカルニチン)濃度も減少していた。ちなみに,HCV患者やIFN治療後の血清カルニチン値は,健常人と比べ差が見られなかった。また,血清ケトン体(3-ハイドロキシ酪酸)濃度も,健常人とHCV患者には違いが見られなかった。そのため,HCV感染時には,β酸化能の低下以外に別の経路で,血中アセチルカルニチン濃度が減少している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HCV患者に対するインターフェロン/リバビリン治療,血清サンプルの収集と脂質代謝関連マーカーの分析については,概ね計画通りである。 しかし,培養細胞モデルを用いたin vitroの実験系については,方法論等の見直しも行った事に加え,昨年度は血清マーカーの分析に重点を置いたため,計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までと同様に,インターフェロン/リバビリン治療中の慢性C型肝炎患者の血清サンプルの収集と臨床診断情報の収集を引き続き行う。 脂質代謝関連マーカーについて,血清中の定量に加え,患者肝組織中の定量も行い,血清中と肝組織中の指標の関連性を明らかにしていく予定である。 また,脂質代謝マーカー以外に,C型肝炎ウイルス感染によって血液中へ排泄される代謝産物やHCV増殖関連酵素,遺伝子産物の同定を,患者血清ならびに培養細胞モデルを用い,臨床データと比較していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度までと同様に,HCV感染患者の血清サンプルの分析を行う予定であるので,分析に係る消耗品等を購入する予定である。 さらに,培養細胞モデルにおける,遺伝子導入,培養,分析等に係る費用にも用いる。 また,研究成果に依っては,順次,学会発表も行う予定であるため,旅費としての使用も予定している。
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