研究課題
多くの肝癌は慢性炎症による組織の線維化を背景に発癌し、この過程において活性酸素種(ROS)の蓄積およびその下流分子JNKが重要な役割を果たしている。癌幹細胞の増殖にはROS依存性と非依存性の経路があり、前者にはc-Jun/JNK, SOX2が、後者にはガンキリンによる血管内皮増殖因子(VEGF), Nanog発現の制御が関与している。ヒト大腸、肝癌において、ガンキリンの発現量は癌幹細胞マーカーであるCD133の発現量と有意な相関を認め、ガンキリンは炎症や幹細胞の制御を介して発癌に関与していると思われる。ROS、ガンキリンを標的とした新しい治療効果予測のバイオマーカーや治療薬の開発が期待できる。epitherial mesenchymal transition (EMT)は癌細胞の浸潤、転移に重要な病態と考えられている。ガンキリンは、TWIST, SNAILなどEMTに関わる遺伝子発現に影響があった。一方で、ガンキリンknock-downによるNF-kB, MAPKへの影響は限定的であった。ストレス応答蛋白は外界からの刺激に対して生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。HSP27はROSの蓄積を阻害し、肝発癌を抑制し、一方でEMT及び癌の脱分化に関与する可能性がある。ガンキリンとストレス応答蛋白の関連について今後研究を進めていく。分子標的薬ソラフェニブ治療前に肝生検にて採取した肝組織を用いた検討にて、治療抵抗性に関わる遺伝子を検討した肝癌患者におけるソラフェニブ治療抵抗性および予後と癌幹細胞マーカーであるCD133の発現量との間に相関があり、治療抵抗性の獲得における癌幹細胞の重要な関与が示唆された。JNK活性がソラフェニブ治療抵抗例で高い傾向を示した。ガンキリンの幹細胞制御機構を考えると、ガンキリンがソラフェニブなど化学療法奏功性と関連があることが予想される。今後ヒトにおいても研究を進めていく。
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