研究課題/領域番号 |
23591001
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
冨田 謙吾 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 助教 (50317129)
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研究分担者 |
関 修司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (80531392)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝臓線維化 / 肝臓癌 / Angptl2 |
研究概要 |
我々は既に、Angptl2 ノックアウトマウスを作成した。これらのノックアウトマウス・wild マウスに、CCL4 4週間投与、 DMN 12週間投与、Bile duct ligation施行により各々肝硬変モデルを作成し、肝臓の線維化の程度を、各マウス間で比較検討施行中である。各群の肝臓より、RNA、タンパク質を抽出し、DNA array法、Real time PCR法、Western blot法、免疫沈降法、Gel shift assay法を用い、Akt、MAPK、AMPキナーゼ、PPARalpha,beta,gamma signal、サイトカインを初めとした各種パラメーター及び、転写因子の変化をさらに定量的に評価施行している。さらに、ミトコンドリア抽出により、その膜電位・ATP合成を定量評価している。また、各グループ内で、肝臓RNA・タンパク質、血清タンパク質に関して、DNAマイクロアレイ法およびprotein chip法をおこない、病態形成に有意義と考えられる遺伝子産物のピックアップも施行中である。肝臓癌モデルとして、Diethylnitrosamine 6週間投与、または コリン欠損食+ethionine 9カ月投与を施行中である。さらに、近年報告された、高脂肪食摂取とDiethylnitrosamineの組み合わせによる肥満誘導性の肝臓発癌モデル (Park-EJ et al. Cell 2010; 140: 197-208)も作成中である。腫瘍形成における各マウス間の差異を比較検討するとともに、apoptosis、細胞増殖能に関わる各種マーカーの検討準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、Angptl2 ノックアウトマウス及びwild マウスに非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。また今年度は、肝臓線維化モデルを作成し、解析中である。今年度はさらに肝臓発癌モデルも作成中である。おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はAngptl2 ノックアウトマウス及びwild マウスを用いて肝臓線維化モデルを作成し、またさらに肝臓発癌モデルを作成中であり、肝再生モデルの作成も予定している。既に作成した非アルコール性脂肪肝炎モデルと併せて、今後一括して詳細な病態機序の解析を進める予定としている。さらに今後、肝臓星細胞特異的Angptl2欠損マウス、肝臓星細胞Angptl2過剰発現トランスジェニックマウスを作成し、それらを用いた検討を同様に施行し肝臓局所での病態機序の解明をおこなう予定としている。 各マウスより分離した、初代培養肝細胞・Kupffer細胞・肝星細胞・類洞内皮細胞を用いたin vitro解析も併せて進め、Angptl2の肝臓構成細胞に対する直接作用の検討も施行し、またその際Angptl2下流のシグナル伝達のメカニズムの解明、Angptl2発現制御因子の解析を試みる。さらに、防衛医科大学校病院の単純性脂肪肝・非アルコール性脂肪肝炎患者、肝硬変患者、肝臓癌患者における血清Angptl2濃度の測定、Angptl2遺伝子のSNP解析を施行する。肝生検によって得られた組織よりRNAを回収し、各種マーカー遺伝子の発現量を検討するとともに、免疫組織学的検討もおこなう。上記の動物実験で得られた知見とヒト病態との相関の検討をおこなう。本検討は、防衛医科大学校倫理委員会の承認のもと、文書にて患者の承諾を得た上で施行する。 以上の検討により、非アルコール性脂肪肝炎・肝臓線維化・肝臓癌の病態機序に果たすAngptl2の役割を明らかとすることができる。Angptl2に関わるこれらの知見を、実際の臨床における診断・治療へ応用させるべく、今後の研究を推進させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度まではAngptl2 ノックアウトマウス及びwild マウスを用いて、脂肪肝炎モデル、肝臓線維化モデル、肝臓発癌モデルを作成してきた。次年度はさらに、これらのマウスを用いて部分肝切除実験を行い、残存肝の肝再生能、肝障害の程度を、組織学的・血清学的に、経時的な比較検討を行う予定としている。その際、cyclin D1, PCNA発現、BrdU 取り込みの変動により、細胞周期・増殖能の評価を行う。また、TUNEL assay、caspase3活性測定によりapoptosisの評価を、また、各群の肝臓より、RNA、タンパク質を抽出し、DNA array法、Real time PCR法、Western blot法、免疫沈降法、Gel shift assay法を用い、IL6, TNFalpha, HGF等のサイトカインを初めとした各種パラメーター及び、STAT3を初めとする転写因子の変化を定量的に評価する予定である。またCCL4急性投与を各マウスに施行し、同様の検討を行い、肝障害後の肝再生についての評価も行う予定としている。 次年度は最終年度でもあり、現在まで作成してきた、各肝臓疾患モデルマウスの各群の肝臓より、RNA、タンパク質を抽出し、各種パラメーター・転写因子につき詳細な解析を進めるとともに、DNAマイクロアレイ法およびprotein chip法を用いて、さらに網羅的な病態解析を進める。Angptl2が各病態に果たす役割を明らかとして、各肝臓病診断・治療への応用を目指す。そのため、防衛医科大学校病院の単純性脂肪肝・NASH患者、肝硬変患者、肝臓癌患者における肝臓検体・血液検体を用いた解析も併せて施行する。
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