研究課題/領域番号 |
23591007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河上 洋 北海道大学, 大学病院, 助教 (80399823)
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研究分担者 |
小林 隆彦 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80333607)
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キーワード | 膵癌 |
研究概要 |
膵癌は消化器癌の中でも予後不良であり、特に薬剤に対する治療抵抗性が治療成績を悪化させている一因である。手術不能症例ではgemcitabine (GEM)を標準治療薬とする化学療法が選択されるが、その奏功率は20%にも満たない。また5-フルオロウラシル(5FU)なども投与されるが、GEMの効果を凌駕する薬剤は明らかにされていない。しかし化学療法中におけるGEMあるいは他剤への獲得耐性の出現は早晩不可避である。そのため膵癌細胞の抗癌剤への感受性や耐性に関する分子機構の研究は重要な緊急課題である。 遺伝情報の発現は、DNAからタンパク質までの様々な段階で複雑かつ巧妙に制御されている。RNA結合蛋白質(RBP)は、mRNAのスプライシング、核外輸送、細胞質内局在、安定性及び翻訳効率の調節などの転写後遺伝子発現調節において重要な働きをしている。申請者らはRNA結合蛋白RBM5が、癌抑制遺伝子p53の転写活性を亢進させることを見出した。 本研究は、抗癌剤投与中の膵癌細胞において、RBM5に直接結合する抗癌剤感受性制御遺伝子が、抗癌剤感受性あるいは耐性に与える 影響を検討し、その機序を解明し、抗癌剤耐性克服への応用を目指すものである。 RBM5は癌細胞に対して、5-FUなどの各種抗癌剤の感受性を高めることを見出した。また、非常に特異性の高い抗RBM5モノクロナール抗体を作成した。この抗体を用いてRNA-結合タンパク質免疫沈降法(RIP)を実施し、膵癌細胞からRBM5に特異的に結合するmRNAを回収し、網羅的にRNAシーケンスを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RBM5に結合するmRNAをRNA-結合タンパク質免疫沈降法を実施し、膵癌細胞からRBM5に特異的に結合するmRNAを回収している。しかし ながらRBM5に結合しているRNAは非常に微量であり、mRNAそのものが不安定であり、定量・定性の検討が非常に困難であり、再現性の 検討を慎重に行っている。 また幾つかの候補遺伝子が、膵癌細胞株に特異的なものか、膵癌以外の消化器癌などにも共通のものなのかの見極めは簡単ではない。さらには、RBM5以外のRNA結合蛋白への結合性の検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRBM5に結合するmRNAのうち、既知のGemcitabineあるいは5-FUの代謝酵素などにしぼり込み、膵癌細胞内での検討を行ってい く予定である。 これらのうちGemcitabineあるいは5-FUの投与により、著しく変動するRBM5に結合する候補遺伝子の膵癌細胞おける抗癌剤投与前後にお いて、mRNA発現量変化をReal Time PCR法により確認し、さらにタンパク発現量変化をWestern Blot法により確認していく。 またRBM5がMDR-1、MRP-1、MRP-2などの既知の多剤耐性遺伝子の発現に与える影響も合わせて検討していく予定である。 また実際の化学療法を想定し、これらの候補遺伝子の変化が、Gemcitabineあるいは5-FUなどの抗癌剤の投与方法によって、変動の程度に差があるのかを検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度分の研究費は、今後も候補遺伝子の解析のためにReal Time PCRのための試薬、Western Blot法のための抗体を購入する 資金として研究費を利用したい。 また候補遺伝子の発現ベクター作成、ノックダウンsiRNA作成などにも使用していく予定である。研究費はこれらの遺伝子工学的実験の試薬類や細胞工学的実験のための費用に使用する。さらには動物実験に発展させ、マウスを購入し、in vivo実験へ発展させていきたい。
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