研究課題
膵癌は消化器癌の中でも予後不良であり、特に薬剤に対する治療抵抗性が治療成績を悪化させている一因である。手術不能症例では gemcitabine (GEM)を標準治療薬とする化学療法が選択されるが、その奏功率は20%にも満たない。また5-フルオロウラシル(5FU)なども投与されるが、GEMの効果を凌駕する薬剤は明らかにされていない。さらに化学療法中におけるGEMあるいは他剤への獲得耐性の出現は早晩不可避である。そのため膵癌細胞の抗癌剤への感受性や耐性に関する分子機構の研究は重要な緊急課題である。遺伝情報の発現は、DNAからタンパク質までの様々な段階で複雑かつ巧妙に制御されている。RNA結合蛋白質は、mRNAのスプライシング、核外輸送、細胞質内局在、安定性及び翻訳効率の調節などの転写後遺伝子発現調節において重要な働きをしている。申請者らはRNA結合蛋白RBM5が、癌抑制遺伝子p53の転写活性を亢進させることを見出した。本研究は、抗癌剤投与中の膵癌細胞において、RBM5に直接結合する抗癌剤感受性制御遺伝子が、抗癌剤感受性あるいは耐性に与える影響を検討し、その機序を解明し、抗癌剤耐性克服への応用を目指すものである。RBM5は多くの癌細胞に対して、5-FUなどの各種抗癌剤の感受性を高めることを見出した。また、非常に特異性の高い抗RBM5モノクロナール抗体を作成することに成功した。この抗体を用いて共免疫沈降反応(Co-IP)によりRBM5に結合するタンパク質、RNA結合タンパク質免疫沈降法(RIP)により、RBM5に結合するRNAの解析を行った。Co-IPならびにRIPにより、細胞増殖、細胞周期調節、アポトーシスなど、抗癌剤耐性に関連する可能性のある分子を選択し機能解析を行っており、今後も継続していく予定である。さらには、その中から抗癌剤耐性克服に有力と思われる分子の制御を介した新たな治療法の開発に結びつけたいと考えている。
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10.1007/s00535-014-0954-y
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