研究課題/領域番号 |
23591008
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
正宗 淳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312579)
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研究分担者 |
濱田 晋 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20451560)
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / マイクロRNA / 遺伝子 / アンギオテンシン受容体拮抗剤 / 幹細胞 / stemness |
研究概要 |
平成24年度は膵臓癌細胞と膵星細胞の共培養系を用いて、膵癌細胞の幹細胞性(stemness)に与える影響をin vitroの系にて検討した。膵星細胞との共培養により、膵癌幹細胞性の指標である(1) ultralow attachment culture dish上でのスフェア形成能の増強、(2)Snail、ABCG2、Nestin、LIN28の遺伝子発現の上昇、(3)ヌードマウス皮下での腫瘍形成能の増強がみられ、膵星細胞が膵癌幹細胞性を増強することが明らかとなった。次に、この相互作用を司るマイクロRNAを同定するために、単培養ならびに膵星細胞との共培養した膵癌細胞からマイクロRNAを抽出し、マイクロアレイを行った。単培養に比して共培養することで発現上昇のみられたマイクロRNAを同定した。このマイクロRNA発現上昇は、複数の膵癌細胞株にて共通して認められた。このマイクロRNAの発現を、miRNA inhibitorを用いた一過性発現抑制、ならびに安定発現抑制株を樹立して検討した。このマイクロRNA発現抑制により、膵星細胞との共培養によるABCG2発現誘導や、上皮間葉形質転換の抑制がみられた。以上の知見より、本マイクロRNAが膵癌-膵星細胞間相互作用を担う重要なマイクロRNAである可能性が示唆された。さらに膵星細胞―膵癌細胞間相互作用をターゲットとした新たな膵癌治療法の開発にむけて、膵癌細胞単独あるいは膵癌細胞+膵星細胞を皮下移植したヌードマウスに、アンギオテンシン受容体拮抗薬であるオルメサルタンを投与して腫瘍増大に与える影響につき検討した。オルメサルタン投与により、皮下腫瘍の増大は著明に抑制された。興味深いことに、膵癌細胞単独で皮下移植した場合には抑制効果はみられず、オルメサルタンが膵星細胞をターゲットとして、膵癌増大抑制作用を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的は、膵線維化形成に中心的役割を果たす膵星細胞が、膵癌幹細胞性を制御するかを明らかにすることであった。幸いにもin vitroおよびin vivoの実験系を用いて、膵星細胞による膵癌幹細胞性の誘導を明確に示すことができた。さらにマイクロRNAマイクロアレイを用いて、膵癌―膵星細胞間相互作用を司る、カギとなりそうなマイクロRNAを同定し、機能解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に絞り込んだマイクロRNAについて機能解析ならびにターゲット遺伝子の同定をすすめる。一方、膵星細胞サイドにおいて発現変化しているマイクロRNAについても、同定を試みる。現在マイクロアレイを施行中であり、その結果に基づいた検討ならびに、in vivoでの腫瘍進展抑制効果の検討を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、平成24年度に絞り込んだマイクロRNAについて機能解析ならびにターゲット遺伝子の同定をすすめる。発現抑制株と親株間でmessenger RNAマイクロアレイを行いう。一方、膵星細胞サイドにおいて発現変化しているマイクロRNAについても、同定を試みる。現在マイクロアレイを施行中であり、その結果に基づいた検討ならびに、in vivoでの腫瘍進展抑制効果の検討を計画している。あわせて、積極的に海外の学会でならびに英文論文発表を行う予定であり、それらの費用にも支出を予定している。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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