研究課題
膵がん細胞の悪性度に関わるepigenetic関連遺伝子を探索する目的でさまざまなヒストン修飾酵素群をコードする遺伝子群のshRNAパネルを作成、膵がん細胞株でその安定発現株を樹立して表現型の変化をスクリーニングしてきた。その結果、ノックダウンにて膵がん細胞の浸潤能、腫瘍形成能を増加させるヒストン修飾分子KDM6を同定した。KDM6ノックダウン膵がん細胞ではin vitroでの遊走能や浸潤能が増加する。またin vivoの検討でも皮下移植されたノックダウン細胞はコントロールでは見られない著明な腹膜播種や血性腹水をきたし 、膵への同所移植では肝・肺転移を引き起こした。複数の膵がん細胞でこの表現型は再現されたが、一方他の消化器癌である胃癌や大腸癌細胞ではKDM6ノックダウンの影響は必ずしも見られないことから、膵がん特異的なKDM6の作用が示唆された。膵がん細胞においてKDM6の下流の分子群を抽出するため、KDM6ノックダウン細胞とランダムコントロール細胞との間で、網羅的な遺伝子発現プロファイルを行った。その発現アレイデータを基にしたGSEA解析によると、ノックダウン細胞では転写因子C/EBPの下流遺伝子セットが高いNESと有意差をもって誘導されていた。実際C/EBPを膵がん細胞においてノックダウンしたところKDM6ノックダウンと同様にin vitroでの遊走能・浸潤能の増加およびin vivoの転移能増強が認められたことから、C/EBPがKDM6の下流で膵癌細胞の悪性度にかかわる可能性が考えられた。C/EBPがKDM6の下流であるかを確認するため、クロマチン免疫沈降などを行なったところ、そのプロモーター領域への結合が確認され、同時にヒストン修飾状態の変化も認められた。今回の研究により、ヒストン修飾異常が膵がんの生物学的特性に与える影響とその分子機序の一端を明らかにした。
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