研究課題
自己免疫性疾患(AIP)は遺伝的要因と環境要因が背景に存在する多因子疾患である。本疾患の病態に関連する遺伝的要因解明の目的で、Affimetrix社製SNPチップ、GeneChip Human Mapping 500k Array Setを用いて自己免疫性膵炎115検体の全ゲノム網羅的な相関解析(genome-wide association study: GWAS)を行った。コントロールのタイピングデータは健常人315例分をもちいた。本検討、解析1はAIP とコントロールとの相関を、解析2ではAIP におけるIgG4高値群とコントロールとの相関を評価した。P値が0.0001未満を示すSNPを抽出したところ、解析1で38SNP、解析2で37SNP、で強い相関を認め、それらに共通するSNPとして17SNPを認めた。これらの関連遺伝子から機能的に興味深い3種類の遺伝子CLNK、PAX5、FCER2に注目した。CLNKは、T細胞およびB細胞抗原レセプターの下流で免疫シグナルを調節し、IgEレセプターを介したMAST細胞の脱顆粒反応や,サイトカイン刺激に伴う多様なシグナル伝達に関与している。PAX5は、CD19遺伝子プロモーター、B細胞に特異的なtyrosine kinase遺伝子BLK、heavy chain locusの調節領域に結合するBSAPをコードしている。CD23とも呼ばれるFCER2は、低親和性IgE受容体として、主に成熟B細胞、単球、濾胞樹状細胞に発現し、B細胞の活性化とIgEの下方制御に関与しており、細胞接着、抗原提示、B・T細胞の増殖と分化、アポトーシスからの救済、細胞毒性物質の放出、IgE産生の調節にも関与している。これら3種類の遺伝子内のSNPで確認試験を行ったところ、CLNKとPAX5では相関を示したが、FCER2では有意な相関を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
Affimetrix社製SNPチップ、GeneChip Human Mapping 500k Array Setを用いて自己免疫性膵炎115検体の全ゲノム網羅的な相関解析(genome-wide association study: GWAS)を行い、候補遺伝子を3種類同定した。これらの臨床的意義については検索が進んでいないので、検討が必要である。また、検体数が未だ充分ではなく、集積する必要がある。
今回明らかになった、自己免疫性膵炎の病態に関連していると考えられる候補遺伝子の臨床的意義について検討を進める。また、GWASを推し進め、さらに涙腺・唾液腺炎に関連した遺伝子の検索を行う。涙腺・唾液腺炎合併例と非合併例の間で、有意な相関を認めるSNPsを検索し、関連する遺伝子を見つけ出す。GWASの検討には充分な症例数をそろえることが望まれるが、臨床検体のさらなる集積に努める。
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。自己免疫性膵炎の病態に関連した候補遺伝子、涙腺・唾液腺炎の病態に関連する候補遺伝子を見つけ出し、遺伝子内SNPsで確認試験を推し進める。各候補遺伝子について臨床的意義の検討を行う。
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