研究概要 |
自己免疫性膵炎と涙腺・唾液腺炎は代表的なIgG4関連疾患であり、両者の臨床像の特徴を合併例で検討した。対象は涙腺・唾液腺病変を合併しない自己免疫性膵炎47例(A群)と合併60例(B群)である。血液検査ではA群と比較してB群で活動性マーカーIgG、IgG4、可溶性IL2受容体、β2ミクログロブリンが有意に高値であり、後腹膜線維症、腎病変の合併も多く認めた。従って、自己免疫性膵炎において涙腺・唾液腺病変を合併例は活動性が高い状態であると推察された。涙腺・唾液腺病変合併に関連する遺伝子を検索する目的でgenome-wide association study: GWASを行い、自己免疫性膵炎例で涙腺・唾液腺病変非合併と合併の患者群間において、アリル頻度にp<0.0001で有意差を示すSNPsから、涙腺・唾液腺病変誘発に関わると思われる遺伝子KLF7, ABI3BP, SNCAIP, COL12A1, MATN2, SH3GL2, FLJ45537, MPPED2, NTRK3を選出した。これら遺伝子のうち、MANT2とMPPED2遺伝子について、GWASで使用されていない新たなSNPsを設定し、TaqManプローブを用いたタイピングを行った。両遺伝子内に設けたSNPsには、GWASで示されたようにp<0.01で相関を示すSNPが認められた。これらの遺伝子は合併に関与するつ考えられる。その他の遺伝子についても今後詳細な検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己免疫性膵炎は遺伝的要因と環境要因が背景に存在する多因子疾患である。本疾患の病態に関連する遺伝的要因解明の目的で、Affimetrix社製SNPチップ、GeneChip Human Mapping 500k Array Setを用いて、自己免疫性膵炎115検体の全ゲノム網羅的な相関解析(genome-wide association study: GWAS)を行った。コントロールのタイピングデータは健常人315例分をもちいた。IP とコントロール、IgG4高値群とコントロールとの相関解析で、p<0.0001の有意差を示す共通SNPを21種類認めた。これらのSNPsが位置する遺伝子は、KIRREL, MIST, HLA-DQB1, RIMBP2, MYO1E, GPR139, FAM33A, FCER2, ZNF536, C20orf4の10種類であった。この中で、機能的に興味深い3種類の遺伝子CLNK、PAX5、FCER2についてfine mapping を行った結果、CLNK遺伝子内に設けた新たなSNPとも相関を示した。候補遺伝子を同定し、これらの本疾患の発症に関連する遺伝的要因としての意義を検討する予定である。また、上記の如く自己免疫性膵炎の涙腺・唾液腺病変合併に関連する遺伝的要因についても検討を行ったところ、p<0.0001で有意差を示すSNPsから、涙腺・唾液腺病変誘発に関わると思われる遺伝子KLF7, ABI3BP, SNCAIP, COL12A1, MATN2, SH3GL2, FLJ45537, MPPED2, NTRK3が選出された。これら遺伝子のうち、MANT2とMPPED2遺伝子について、fine mapping を行ったところ、新たに設定したSNPsで相関が認められた。
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