研究課題/領域番号 |
23591013
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安田 一朗 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (00377673)
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研究分担者 |
小澤 修 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90225417)
足立 政治 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50467205)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膵癌 / Gemcitabine / HSP27 / EUS-FNA / リン酸化 |
研究概要 |
我々は、膵癌における低分子量ストレスタンパク質heat shock protein (HSP)27の役割に着目し、超音波内視鏡(EUS)ガイド下吸引針生検(EUS-FNA)により得られた膵癌組織を用いて、HSP27およびリン酸化型HSP27の発現量と臨床効果・予後との関係を検討することでHSP27による予後予測を目指している。平成23年度は病理組織における総HSP27およびリン酸化型HSP27の発現の解析を行った。今までに当施設において化学療法前確定診断を目的にEUS-FNAによる病理組織採取を行った膵癌症例のうち、Gemcitabineによる化学療法を施行し、予後が明らかな症例150例を対象とし、この中でGEM奏効群と無効群について、病理組織におけるHSP27およびリン酸化型の発現様式を免疫組織染色にて比較検討した。その結果リン酸化型HSP27の発現の高い症例ではGEMに対し無効であるが傾向が得られた。現在その詳細について症例数を増やし検討中である。さらに変異HSP27プラスミドの作成とその機能解析を行った。HSP27の15、78、82番目のセリン残基をアラニンに置換した恒常的非リン酸化型HSP27(3A)、およびアスパラギンに置換した恒常的リン酸化型の変異HSP27(3D)を作成し、膵癌細胞に遺伝子導入し細胞の増殖能・転移能の違いや細胞内情報伝達に関わる因子への影響について検討した。その結果、control (empty) とwild type (WT)の間に細胞増殖能に有意な差を認めなかったものの、3Aは3Dに対し細胞増殖能の亢進を認めた。またGEMに対する反応についてはemptyとWTの間に有意な差は認めなかった。現在3Aと3Dの間でGEMに対する反応に違いがないか検討中である。さらにこれらに違いがある場合に分子生物学的な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた計画についておおむね順調に進んでいる。「病理組織における総HSP27およびリン酸化型HSP27の発現の解析」EUS-FNAを用いてHSP27およびリン酸型HSP27の発現量を組織染色にて計測したが、至適な条件設定を見出すのにやや難渋したことと、予想より検体量が微小である症例が多く、結果的に症例数が減少してしまっているため、今後追加で組織染色を行う必要がある。「変異HSP27プラスミドの作成とその機能解析および膵癌由来細胞におけるGemcitabine投与によるHSP27およびリン酸化型HSP27の変化の検討」変異HSP27プラスミドの作成および恒常的膵癌細胞株は樹立できた。またそれぞれ細胞株について細胞増殖能、GEM投与による殺細胞効果の検討は終了しており、おおむね順調である。今後は以下にあげるような項目について詳細な検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「変異HSP27のstable transformant cell lineを用いたリン酸化型HSP27の機能解析」Panc1細胞に変異型HSP27の遺伝子を恒常的に導入したstable transformant cell lineを用い、細胞増殖やアポトーシスなどの細胞機能の変化をMTT assay・immunoblot法・ウェスタンブロット法で検討、変異HSP27によるVEGF産生の変化について検討、その他の転移能のマーカー(MMP, t-PAなど)についても検討、各種抗がん剤による殺細胞効果における変異HSP27の影響をMTT assay, immunoblot法あるいはRT/PCR法で検討、 リン酸化型および非リン酸化型HSP27の免疫蛍光染色を行い、Gemcitabine投与によるそれぞれの局在の変化をWild type(WT)と比較検討する。「変異HSP27のトランスジェニックマウスの作成」これらの変異HSP27プラスミドを用いて、トランスジェニックマウスの作成を行い、in vivoでの解析を進める。当大学は隣接して動物実験施設を保有しており、またトランスジェニックマウスの手技的経験を有している研究者がおり、的確なアドバイスのもとただちに動物実験が取りかかることのできる環境にある。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記に挙げた方策に対し、必要な試薬・機器の購入に充てる。具体的にはMTT assay試薬、免疫染色に必要な蛍光標識抗体、蛍光顕微鏡の使用代、ウェスタンブロットに必要な諸経費などである。また細胞株維持に必要なクリーンベンチおよびその周辺試薬が一定量必要である。症例数の一層の積み重ねが必要であることから薄切標本の作製、免疫染色に必要な試薬一般が追加で必要である。また今後の方向性についての見聞を深めるために関係学会への参加も予定しているため交通費などが必要である。
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