研究課題/領域番号 |
23591013
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安田 一朗 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377673)
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研究分担者 |
小澤 修 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90225417)
足立 政治 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (50467205)
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キーワード | 膵癌 / Gemcitabine / HSP27 / EUS-FNA / リン酸化 |
研究概要 |
本研究は膵癌における低分子量ストレスタンパク質heat shock protein (HSP)27の役割に着目し、膵癌化学療法の標準的薬剤であるGemcitabine(GEM)の作用発現におけるHSP27の役割を検討するものである。 これまで当施設において膵癌の化学療法前確定診断を目的に超音波内視鏡(EUS)ガイド下吸引針生検(EUS-FNA)による病理組織採取を行った症例のうち、GEMによる化学療法を施行し予後が明らかな150例を対象とし、このうち2コース終了時の効果判定で有効(partial response: PR以上)あるいは6ヶ月以上不変(long stable disease: long SD)であった症例をGEM奏功群、2コース終了時の効果判定で進行(progression disease: PD)をみとめた症例を無効群として、治療前生検組織における総HSP27量およびリン酸化HSP27の発現について検討した。対象の内訳はGEM奏効群36例、GEM無効群54例、その他(6ヶ月未満のSDと評価不能例)60例であった。この中でGEM奏効群と無効群について比較したところ、リン酸化型HSP27の発現の高い症例ではGEMが無効であるが傾向が得られたため、現在、膵癌の進行度(ステージ)や分化度などとの相関についても検討中である。 また我々は、これまでに変異HSP27プラスミドの作成と膵癌細胞(Panc1)におけるその機能解析を行ったところ、総HSP27ではなく、リン酸化HSP27の発現量がGEM感受性を決定する因子であることを見出し報告した(Nakashima M et al., Cancer Lett 2011)。さらに現在、これらin vitroでの結果と臨床検体での結果との整合性について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に予定していた計画についてはやや遅れが生じている。 病理組織における総HSP27およびリン酸化型HSP27の発現の解析:EUS-FNAによって採取したGEM投与前の膵癌組織検体を、HSP27およびリン酸型HSP27の特異抗体を用いて染色し、その発現量を検討したが、検体量が微小な症例が多く、最終的な評価が可能であった症例数が十分確保できなかったため、その後症例の追加を行った。評価方法については、病理医の指導の下で癌部と非癌部における発現量の違いを検討したうえで、ソフトウェアを用いて癌部の面積と発現量を定量化する公式の作成を試みているが、やや難渋している。 変異HSP27プラスミドの作成とその機能解析および膵癌由来細胞におけるGemcitabine投与によるHSP27およびリン酸化型HSP27の変化の検討:変異HSP27プラスミドの作成および恒常的膵癌細胞株を樹立し、これらの細胞株について細胞増殖能、GEM投与による殺細胞効果の検討についてすでに報告した (Nakashima M et al., Cancer Lett 2011)。現在、変異HSP27のトランスジェニックマウスの作成に向けた準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに我々は、膵癌細胞Panc1が、migrationにかかわる重要な細胞増殖因子であるvascular endothelial growth factor (VEGF)を自己産生していることを明らかにしたが(論文投稿準備中)、今後、Panc1細胞に変異型HSP27の遺伝子を恒常的に導入したstable transformant cell line用いて、変異HSP27によるVEGF産生の変化について検討する予定である。さらに、その他の転移能のマーカー(MMP, t-PAなど)についても検討する。また、タンパク質の発現に変化が見られる因子に関して、mRNAレベルでの変化を見るためにRT-PCR法を用いてmRNAの発現状態を解析する。さらに、Gemcitabineを含めた各種抗癌剤による殺細胞効果における変異HSP27の影響をMTT assay, immunoblot法あるいはRT/PCR法で検討する。さらにリン酸化型および非リン酸化型HSP27の免疫蛍光染色をそれぞれ行い、Gemcitabine投与によるそれぞれの局在の変化をWild type(WT)と比較検討する。 変異HSP27のトランスジェニックマウスの作成 我々は、これらの変異HSP27プラスミドを用いて、トランスジェニックマウスの作成を行い、in vivoでの解析を進める。当大学は隣接して動物実験施設を保有しており、またトランスジェニックマウスの手技的経験を有している研究者がおり、的確なアドバイスのもとただちに動物実験が取りかかることのできる環境にある。
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次年度の研究費の使用計画 |
症例数が今年度予定していた数より少なく、それに伴い標本作製および免疫染色等の費用が減少した。 上記に挙げた方策に対し、必要な試薬・機器の購入に充てる。具体的には各種免疫学的手法および生化学的手法に必要な経費である。また、細胞株維持に必要なクリーンベンチおよびその周辺試薬が一定量必要である。さらに、症例数のさらなる蓄積が必要であることから薄切標本の作製、免疫染色に必要な試薬一般も追加で必要である。また、今後の方向性についての見聞を深めるために関係学会への参加も予定しているため交通費なども必要である。
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