研究課題
本研究では,低濃度の化学療法が癌細胞の浸潤を促進するという従来考えられていなかった発想をもとに,その転移浸潤誘導因子を同定することを目的としている.また,GSK3b阻害剤により,これらの因子の発現や機能の制御による浸潤抑制と抗がん剤の増感効果を組み合わせる新しいがん治療ストラテジーの開発を目指している.さらに臨床試験により,実際に抗腫瘍効果・転移抑制効果について検討し,これらの結果,難治性癌である膵癌に対しての治療成績の向上を期待するものである.抗がん剤投与により誘導されるEMT誘導蛋白質の機能解析:膵癌細胞におけるEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮間葉移行)が抗癌剤により起こることを分子細胞学的評価方法(ウエスタンブロット,免疫染色)により明らかにした.抗癌剤処理により膵癌細胞からEMT誘導因子が分泌され,その因子HSP90蛋白が関与していることを同定した.これらの研究成果は,化学療法による癌細胞の転移・浸潤を抑制する治療薬の開発につながる重要性を持つ.GSK3β阻害効果を有する市販医薬品を併用した化学療法の第I/II相臨床試験とバイオマーカー探索以前よりGEMとGSK3b阻害剤の併用療法の有効性を明らかにしているが、GSK3b阻害作用を持つ医薬品を併用した化学療法の第I/II相臨床試験を行っている(UMIN000005095)PhaseIとして4例を施行し,本臨床試験の有効性を示す結果が得られたため,GSK3b阻害作用を持つ既存医薬品に関して,「膵臓癌治療剤」として特許を申請した(特願2013-93072)
1: 当初の計画以上に進展している
EMT誘導因子を同定したことと,EMT誘導因子が誘導される状況,及び誘導方法に関しての新たな知見を得た.また,臨床試験については,現在も進行中であるが,治療方法に有効性を見出し特許出願を完了したことから,当初の計画以上に進展していると評価する.
現在行っている臨床試験の症例数をさらに増やす.また,EMT誘導因子については,その誘導される条件をさらに検討し,また産学連携にて新たに開発している実験デバイスによる評価を行う.
該当なし
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PLoS One
巻: 8(2) ページ: e55289.
10.1371/journal.pone.0055289.
J Carcinog
巻: 11(1):15 ページ: page none
10.4103/1477-3163.100866.