研究課題/領域番号 |
23591018
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上里 昌也 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (70436377)
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研究分担者 |
鍋谷 圭宏 千葉県がんセンター(研究所), 医療局, 主任医長 (40322028)
林 秀樹 千葉大学, フロンティアメディカル工学研究開発センター, 教授 (20312960)
松原 久裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20282486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ストレス / 臨床 / 唾液アミラーゼ / 内視鏡治療 / 術中モニター |
研究概要 |
早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)は、低侵襲で根治が期待できる胃温存治療法である。ESDは、高度な技術を要し手術時間が長くなる場合もあるが、多くの施設では全身麻酔ではなく鎮静法が行なわれている。従って、ESD中の患者の鎮痛・鎮静状態の把握は、患者の苦痛緩和とESDの安全な施行のために必須である。本研究では、我々が有用性を発見した唾液アミラーゼ活性測定(Uesato M, Nabeya Y, et al, Gastric Cancer 13, 84-9, 2010)を応用して、ESD中の患者の鎮痛・鎮静状態を客観的かつ正確にモニターし、変化しつつある患者状態に対応すべく投薬できる安全な術中管理システムの構築を目的としている。特に平成23年度には鎮静法による早期胃癌ESDの安全な術中管理法の指針を見い出すことを目標にしていた。鎮静法はベンゾジアゼピン系薬剤(midazolam)での導入と維持を行った。周術期に患者の唾液を採取して、唾液アミラーゼ活性値(sAMY)を測定した。鎮静下ESD中の患者ストレスは疼痛であると推測されるため、ESDを安全に遂行するために適宜鎮痛薬(pentazocine)を投与した。同時に意識レベルをBISモニターで記録し、退院直前にESD中の辛さの自己評価を患者アンケートで行った。以上の方法から得られた結果は、ESD中は患者のBIS値は安定しかつ主観的にも辛さを自覚していないにもかかわらずsAMYの上昇を認めた。これはESDという特殊な内視鏡手術操作(押し込みや過度な胃内送気)にてみられる。またそのsAMYの上昇は、鎮痛薬の投与で速やかに低下した。これより、内視鏡という低侵襲手術であるが、鎮静・鎮痛薬を使用することの重要性が見いだせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期胃癌に対するESD中の患者の鎮痛・鎮静状態を客観的かつ正確にモニターし、変化しつつある患者状態に対応すべく投薬できる安全な術中管理システムの構築をすることが本研究の目的である。現在までで、ESD中の患者の鎮痛・鎮静状態を客観的かつ正確にモニターできることは達成できたと考える。そして、この結果をもって現在論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果から、鎮静下ESD患者の術中ストレスを覚醒による精神的ストレスと手術操作などの疼痛による身体的ストレスに鑑別できる。そして、体動などで示される術中の患者ストレスが、覚醒が原因なら鎮静剤の追加投与を、疼痛なら手術操作で解除可能かを判定し、不可能なら鎮痛薬の投与を速やかに行うといった指針を確立していく。次に、midazolamでのデータを蓄積した後にpropofol麻酔におけるsAMYとBIS値の推移を検討する。propofolは、速やかな覚醒が期待でき嘔気抑制作用が強いことからESD直後のsAMY抑制を期待できる。以上から、propofolの安全な使用基準が学会・論文等で提言できると考える。また、術中ストレス評価をsAMYだけでなく血清フリーラジカル測定も合わせて行う。これは、ストレス評価を多角的に行うことで正確性を高めるためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の結果報告としての投稿料や学会時の旅費として使用する。またpropofolを使用しESDを行った際のストレス測定の継続や、新たなストレス測定としての血清フリーラジカル測定にかかる諸費用として使用する。
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