研究概要 |
1990年1月から2010年3月末までに、広島大学病院消化器外科において外科的切除を施行し、リンパ節転移の有無が確認できた胃SM癌患者100名(リンパ節転移陽性25例、陰性75例)に対して、内視鏡治療適応外胃癌のホルマリン固定パラフィン切片を用いて腫瘍表層部とSM浸潤先進部からDNAを抽出し、これまで進行胃癌にてリンパ節転移に関連すると報告されているmicrosatellite instability(BAT26), mitochondrial DNA遺伝子を中心に、各々100-400μl/サンプルを使用し、DNA抽出液を分注してThermal cyclerにてDNAを抽出する手法により実験を行ったが、今回のサンプルでは表層部とSM浸潤先進部における上記マーカーの発現はほとんど認められずheterogeneityも認めなかったため、胃SM癌に対して腫瘍表層部の生検組織を利用したリンパ節転移予測の可能性は臨床的に困難と結論づけた。一方、臨床面からの検討では、早期胃癌の中でも特にリンパ節転移のリスクが高いとされる未分化型早期胃癌を中心に内視鏡的摘除された症例を対象に臨床病理学的特徴と長期予後の点からリンパ節転移リスク因子を解析した。その結果、内視鏡的摘除はtotal excisional biopsy法として有用ではあったが、SM癌はいずれの臨床病理学的因子にも関わらずリンパ節転移が高く(一方、M癌であれば径2cm、UL陰性、脈管侵襲陰性ではリンパ節転移リスクが極めて低く経過観察可であることが立証された)、内視鏡的摘除のみでは根治と判定できないため外科的摘除が必須であることを明らかにした(Surg Endosc 28, 639-647, 2014)。
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