研究課題
急性心筋梗塞の再灌流療法時にポストコンディショニングを行うことで、梗塞サイズの縮小効果が報告されており、我々は安全かつ有効なポストコンディショニング法の開発をめざしている。まず、本法による心筋救済効果、再灌流障害の抑制効果のメカニズムがプレコンディショニングと同一であるのかを検討した。 初回急性心筋梗塞症例をコントロール群とポストコンディショニング群の2群に割り付けをした。ポストコンディショニング群では、バルーンによる1分間の拡張と1分以内の再灌流を4回繰り返し、その後適切なサイズのステントを留置し、コントロール群では、従来通りのバルーンによる前拡張後にステント留置を行った。発症1週間以内の急性期に201Tl (TL)および123I-BMIPP (BMIPP)心筋SPECT、さらに6カ月後の慢性期に再度TL SPECTを撮像し心筋救済率を算出した。再灌流障害の指標として再灌流後のECGのST resolution、微小循環障害の指標としてmyocardial blush gradeを評価し比較検討を行った。 ポストコンディショニング群では70%にST resolutionを認め、Slow flowやmyocardial blush grade1以下を呈した症例は認めなかった。さらにポストコンディショニング群では対照群に比し、総和CPKは有意に低値、慢性期LVEFは有意に高値であり、心筋救済率はプレコンディショニング群に匹敵した。ポストコンディショニングは再灌流障害および微小循環障害を軽減し、心筋サルベージ効果をもたらすことが証明された。
2: おおむね順調に進展している
ポストコンディショニング法はある程度の経験・熟練が必要であるが、この一年間で我々は安全かつ効果的な手技を行うことができている。現在のところ、症例数も順調に増えており、結果も概ね納得のできるものになっている。
本研究ではポストコンディショニングの機序として熱ショック蛋白(HSP)を介する心筋救済効果、再灌流障害の抑制を考えている。その仮説を証明すべく、急性心筋梗塞において再灌流前、再灌流直後から72時間まで採血を行い、分離白血球中のHSP72発現量の測定を行う。測定にはHSP72抗体(DAKO社kit)およびフローサイトメトリー法を用いて定量的に評価したい。
平成23年度と同様、初回急性心筋梗塞症例をコントロール群とポストコンディショニング群の2群に割り付け、両群について上記項目を評価しHSP72発現量との関連性を明らかにする。 平成23年度の対象患者に対して、6か月後にTL心筋SPECT、心臓MRIのフォローアップを行う。さらに本研究期間中である6ヶ月から1年間の予後を追跡し、(1)全死亡、(2)心臓死、(3)急性冠症候群の発生、(4)心不全の発症、(5)血行再建術の施行について調査する。
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