研究課題/領域番号 |
23591025
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
竹内 利治 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10372278)
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研究分担者 |
長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
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キーワード | ポストコンディショニング / 急性心筋梗塞 / 経皮的冠動脈インターベンション / 再灌流傷害 |
研究概要 |
当院に救急来院された初回急性心筋梗塞症例で、発症12時間以内に冠動脈造影(CAG)を施行し、完全もしくは亜完全閉塞の一枝病変の症例を対象とした。心原性ショック、緊急冠動脈バイパス手術が施行された症例は除外し、コントロール群とポストコンディショニング群の2群に無作為に割り付けた。ポストコンディショニングの方法は、バルーンによる拡張を行い、その後30秒間の再灌流と60秒間のバルーン拡張による再閉塞を4回繰り返すこととし、最終的に適切なサイズのステントを留置した。一方コントロール群は、従来通りのバルーンによる前拡張もしくは血栓吸引療法を行い、その後に適切なサイズのステントを留置した。 さらに梗塞前狭心症(心筋梗塞発症前48時間以内の狭心症発作)の有無により、各群とも2群に分類。ポストコンディショニングと梗塞前狭心症によるプレコンディショニング効果の同等性、相違点、相乗効果について検討した。 ポストコンディショニング群はコントロール群に比しCPKの総和は少なく、心筋救済率も高値であった。また心電図上ST resolutionが良好でslow flowの頻度が少なく、myocardial blush gradeも高値であった。さらに心室頻拍などの再灌流性不整脈の出現率も低率であったことから、ポストコンディショニングは微小循環に対し保護的効果を示すことが証明された。このポストコンディショニング効果は、梗塞前狭心症を有する症例で有意にCPKの総和は少なく、心筋救済率も高値であり、更なる梗塞サイズ縮小効果が認められた。 以上より、プレコンディショニングに加えてポストコンディショニングを施行した際の上乗せ効果が示唆される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポストコンディショニング法は術者の技術と経験が必要であるが、我々は特に問題なく効果的かつ安全に手技を行うことができている。症例数は増えており、梗塞サイズ、左心機能、再灌流障害、微小循環障害などの評価はすでに行っている。これらの結果については、従来我々が行ったパイロットスタディの結果と軌を一にするものであり、概ね納得できるものである。今回は急性期の再灌流療法前後において、熱ショック蛋白(HSP)を経時的に測定している。HSPの推移と臨床評価項目との関連性については現在解析中であり、近日中に中間解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
評価項目としては、(1) 梗塞サイズ:①ΣCKおよびΣCK-MB、②99mTc-tetrofosminと123I-BMIPPから算出した心筋救済率、 (2) 左心機能:心エコーより算出したLVEFと左室局所壁運動、②TLのQGSから算出したLVEF。(3) 再灌流障害:①VT・Vfなどの再灌流性不整脈の発生、②ST再上昇。(4) 微小循環障害:①slow flowの発生、②complete ST resolution、③myocardial blush grade。(5) 予後:①全死亡、②心臓死、③急性冠症候群の発生、④心不全の発症、⑤血行再建術の施行。これらの評価項目とHSP72発現量との関連を検討する。 HSP72は再灌流前、再灌流直後から72時間まで経時的に採血を行い、分離白血球中のHSP72発現量の測定を行う。測定にはHSP72抗体およびフローサイトメトリー法を用いることで定量的に評価する。 症例数は増えているが、統計的な有意差を出すためには、できるだけ多くの症例が必要となる。研究の推進方策としては、積極的に胸痛の救急患者を受入れるよう努力を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同様であるが、HSP72を含む熱ショック蛋白測定用の試薬および事務用品の購入を予定している。また近日中に中間解析を行う予定であるが、新たな知見が得られれば中間報告という形での発表を検討している。加えて本研究に関連する最新の知見を得るためにも国内もしくは海外での学会参加を計画しており、旅費として使用することを予定している。
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