研究課題/領域番号 |
23591029
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
新井 昌史 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60270857)
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研究分担者 |
倉林 正彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00215047)
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キーワード | 心不全 / 駆出率 / バイオマーカー / 左心房 / 負荷心エコー / 脳性利尿ペプチド / 肺高血圧症 / 高血圧性心肥大 |
研究概要 |
平成23年度に、心不全患者を登録するためのデータベースシステムを構築した。心エコー図検査を中心に、BNPなどの血液マーカー、心電図、胸部Xp所見、患者イベント(心不全による入院、死亡)などを検討項目とし、患者登録を開始した。 平成24年度から、登録患者の解析を開始した。高血圧性心肥大から駆出率保持心不全を発症するに至る経過を解明する目的で、48名の駆出率保持心不全患者(心不全による入院を有する)と、48名の心不全発症歴のない高血圧症患者を比較検討した。心不全患者については心不全から回復した退院時に計測を行った。駆出率保持心不全患者では、健常者より左房径が大きく、左房の一回拍出量が有意に低下していたが、これらの数値は高血圧症患者と差を認めなかった。ところが、これらの患者に下肢挙上による前負荷を加えて負荷耐容能を測定すると、駆出率保持心不全患者では負荷に対する左房容積予備能ならびに左房収縮予備能が、単なる高血圧性心肥大患者より有意に低下していた。すなわち、高血圧性心肥大では拡張した左房が左室拡張能の低下を補完して心不全発症にまでは至らないが、左房の予備能が低下すると左房圧の上昇から肺うっ血を来たし、駆出率保持心不全を発症するものと示唆された。従って、下肢挙上による負荷心エコー検査を用いることにより、駆出率保持心不全の病態を明らかにしたと同時に、駆出率保持心不全発症のハイリスク群を検出することが可能になった。 本研究によって、駆出率保持心不全の治療標的として左房機能の改善ならびに肺動脈圧低下をもたらすエンドセリン拮抗薬、PDE-5阻害薬、プロスタグランディンなどの薬剤が、駆出率保持心不全の治療や予防に有用であることが強く示唆された。今後の課題は、ハイリスク群に対し、心不全発症以前から薬剤を投与することによって心不全発症を予防することが可能かどうかの二重盲検試験を行うことである。
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