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2013 年度 実施状況報告書

致死性虚血性不整脈の予測因子の確立および原因遺伝子同定による病態解明と治療構築

研究課題

研究課題/領域番号 23591031
研究機関新潟大学

研究代表者

佐藤 光希  新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (40600044)

研究分担者 池主 雅臣  新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40303151)
キーワード虚血性不整脈 / 心室細動 / 心筋梗塞 / 冠攣縮狭心症 / J波 / 遺伝子
研究概要

1.J波を中心とした心電図所見と虚血性心疾患における心室細動との関連
我々は一般外来の患者の心電図においても広くJ波が存在していることを報告した(申請者ら、JPN J Electrocardiology 2012に掲載)。一方でJ波に関連した致死性心室細動症例を報告している(申請者ら、Pacing Clin Electrophysiol. 2011に掲載)。心筋梗塞や冠攣縮狭心症などの虚血性心疾患でも心室細動を伴うことが知られるが、J波との関連は明らかでなかった。そこで我々は、冠攣縮誘発試験時に心筋虚血を生じた67症例のJ波の変化と心室細動の関連を検討した。結果は、検査前よりJ波を有する14中、心筋虚血に伴って7例でJ波が増大し、4例で心室細動に至った。一方、検査前にJ波を認めなかった53例では、J波と無関係に心室細動を生じた1例のみであった。その結果から、我々は、虚血性心室細動はJ波に関連していることを示した(申請者ら、Europace 2012に掲載)。さらにデータ解析を進めるため、急性心筋梗塞の急性期に心室細動を生じた症例を多数集積しており、すでに50例以上の症例情報が得られている。それらの臨床データと心電図データを解析し、過去の研究結果を含めて報告した(申請者ら、日本心電学会 学術諮問委員会提言シンポジウム 2013に発表)。また、J波と虚血性心疾患に関連した特徴ある所見を同定し報告した(申請者ら、Int J Cardiol 2014に掲載)。
2.虚血性心室細動の新たな原因遺伝子の検索
我々は、特発性心室細動症例における遺伝子解析により、心臓NaチャネルをコードするSCN5Aの遺伝子変異を証明し報告した(申請者ら、Circulation Arrhythmia and Electrophysiology 2011)。虚血性心室細動症例においても同様の心臓イオンチャネルの遺伝子異常が関連している可能性があり、集積されている上記症例についてすでに血液中からゲノムDNAを抽出し原因遺伝子のスクリーニングを開始している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成23-24年度の研究目的の1つであった、冠攣縮誘発試験における心電図所見(特にJ波)と虚血性心室細動の関連を示すことがでた(申請者ら、Europace 2012に掲載)。また、急性心筋梗塞症例における心室細動と心電図所見(特にJ波)との関連も示すことができた
(研究分担者ら、J Electrocardiol. 2012掲載)。平成25年度の研究目的の一つであった、虚血性心疾患の心電図所見とリスクの階層化の研究については、急性心筋梗塞の心室細動症例の情報を集積して解析・検討して報告した(申請者ら、日本心電学会 学術諮問委員会提言シンポジウム 2013に発表)。また、J波と虚血性心疾患に関連した特徴ある所見を同定し報告した(申請者ら、Int J Cardiol 2014に掲載)。この点では、順調な進捗状況と考えられる。
急性心筋梗塞の急性期に心室細動を生じた症例の集積では、平成26年3月31日時点で50
症例を超えており、血液からのゲノムDNAの抽出し、心臓イオンチャネルの遺伝子スクリーニングを開始している。新たな原因遺伝子は今のところ判明しておらず、目的の一つであった培養細胞を用いた生理実験・タンパク実験が十分に行えていない。その点では、研究目的の達成度としてはやや遅れていると判断される。

今後の研究の推進方策

1.心電図所見、特にJ波による虚血性心室細動の危険性の層別化を目的として、症例情報からさらに解析を進める。この目的のために、心筋梗塞症例の集積を継続していく。J波を含めた心電図所見における虚血性心室細動の予測因子について症例観察研究を計画する。
2.虚血性心室細動に関連する遺伝子異常のスクリーニングと機能解析を目的として、心筋虚血に伴って心室細動を生じた症例の集積を継続していく。より多くの症例数の集積は、新たな遺伝子異常の発見率を高めるために重要である。すでに抽出したゲノムDNAを用いた、心臓イオンチャネルの原因遺伝子の検索を開始しているが、その候補遺伝子を
広げていく予定である。次世代シークエンサーなどを用いて解析速度を上げていく予定である。心臓に発現するその他の新規の原因遺伝子も標的にしていく。遺伝子異常が同定された場合には、変異タンパクを培養細胞に発現させて分子レベルでの機能解析を行う。また、判明した結果を解析し、成果の発表を通じて社会への還元を行っていく。

次年度の研究費の使用計画

我々は、臨床分野においてJ波と虚血性心疾患の関連を示して報告した(申請者ら、Int J Cardiol. 2014年掲載)。さらに虚血性心疾患の心室細動症例を集積し、臨床データの解析とともに遺伝子解析を進行中である。現時点で明らかな原因遺伝子の同定には至っておらず、本来は平成25年度の行う予定であった培養細胞を用いた生理実験・タンパク実験が十分に行えていない。そのために研究費の未使用額が生じた。これについては、すでに補助事業期間の延長の承認を得ている。
平成26年度において、遺伝子解析を進めるために幅広く標的遺伝子を定めて解析をすすめる。実際には次世代シークエンサーを用いて解析速度を上げていく予定である。そのための研究費用(器材・試薬費)として300,000円を予定している。また、並行して進める実験として、培養細胞実験の器材・試薬費として410,810円を予定している

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Augmentation of the J wave by rapid pacing in a patient with vasospastic angina.2014

    • 著者名/発表者名
      Sato A, Watanabe H, Sonoda K, Chinushi M, Tsuda T, Izumi D, Furushima H, Minamino T.
    • 雑誌名

      Int J Cardiol.

      巻: 172 ページ: e111-3

    • DOI

      10.1016/j.ijcard.2013.12.121.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Malfunction of cardiac resynchronization therapy due to subsequent fracture of the ring and tip conductors of a co-radial left ventricular bipolar lead.2013

    • 著者名/発表者名
      Sato A, Chinushi M, Izumi D, Furushima H, Minamino T.
    • 雑誌名

      Intern Med.

      巻: 52 ページ: 1189-93

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Arrhythmia and genetic background2013

    • 著者名/発表者名
      Chinushi M, Sato A
    • 雑誌名

      Rinsho Byori.

      巻: 61 ページ: 150-8

    • 査読あり
  • [学会発表] 低侵襲血行動態モニタリングを用いたCRT設定の最適化とその効果2014

    • 著者名/発表者名
      佐藤光希、池主雅臣
    • 学会等名
      第6回 植え込みデバイス関連冬季大会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20140221-20140223
  • [学会発表] J波と虚血性心室細動の関係 -冠攣性狭心症における検討-2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤光希、池主雅臣
    • 学会等名
      第30回 日本心電学会
    • 発表場所
      青森
    • 年月日
      20131011-20131012
  • [学会発表] Failure of Cardiac Resynchronization Therapy Associated with Left Ventricular Lead Fractuere2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤光希、池主雅臣
    • 学会等名
      第28回 日本不整脈学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130705-20130706

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公開日: 2015-05-28  

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