研究課題/領域番号 |
23591033
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井上 博 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60151619)
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研究分担者 |
平井 忠和 富山大学, 大学病院, 講師 (10303215)
城宝 秀司 富山大学, 大学病院, 助教 (90334721)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心不全 / 慢性腎臓病 / 交感神経機能 / 日内リズム |
研究概要 |
心不全に慢性腎臓病を合併すると、心不全増悪のみならず不整脈による突然死が多くなり予後が悪化する。今回、心腎連関の観点から腎機能障害ラットに心筋梗塞による心不全を作成し、自律神経の日内リズムを検討した。 8週令の雄性ラットを用いて5/6腎摘除し、10週令において左冠動脈結紮による心筋梗塞を作成した。術後4週間後、腹部大動脈に挿入した超小型テレメ-タ-から送信された動脈圧波形を覚醒・無拘束状態で24~48時間連続的に記録し、一拍一拍の血圧波形から拡張期血圧を抽出し最大エントロピ-法により解析した。このスペクトル解析から得られる低周波成分を交感神経活動の指標として、24時間の交感神経活動の日内リズムを評価した。 慢性腎臓病(CKD)ラット(n=9)では、平均血圧(MBP)は121±6 (SE) mmHgと高くSham手術を施行した対照群(n=5)より血圧上昇を認めた(MBP:102±3 mmHg)。またCKDラットの血清Cr値は0.95±0.05 mg/dlと対照群の血清Cr値(0.40±0.02 mg/dl)より上昇していた。CKDに心不全を合併したCKD+CHF群(n=5)の血圧、心拍数、呼吸数、活動量は、ラットの夜間活動期(19-7時)に上昇し夜行性動物の日内リズムを認めたが、Sham群に比べ夜間の活動量は低下していた(119±18 vs 241±17 a.u.)。CKD+CHF群の自律神経機能の日内変動を評価したところ、ラットの覚醒時間帯(16-20時)における交感神経機能(LFdp)は960±115mmHg2であり、睡眠期のLFdp 641±94mmHg2に対し一過性に亢進していた。さらにこの覚醒期の一過性交感神経賦活は、CKD単独群、CHF単独群よりも大きかった。以上から慢性腎臓病と心不全合併ラットにおいて覚醒期の交感神経活動の賦活が増大している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性心不全にみられる自律神経機能異常には日内リズムがあり、昼夜にわたる長時間の観察が必要である。本研究ではラットの慢性腎臓病モデルに心不全を作成し、腹部大動脈内に挿入した超小型テレメ-タ-により覚醒・無拘束状態で、24~48時間連続的にラットの自律神経活動の日内リズムを評価することができた。また慢性腎臓病の病態については、血清クレアチニン値、血清尿素窒素、尿中タンパク質排泄量により腎機能を評価し、実験終了後、摘出した腎臓より病理組織標本を作製し、腎組織病変を観察した。PAS染色において、尿細管の拡張、糸球体の肥大および小動脈の内膜肥厚など、糸球体の硬化性病変が観察され、腎機能低下と腎組織所見より慢性腎臓病に合致する所見と思われた。 心臓はマッソントリクローム染色による心筋梗塞サイズの同定と、左室拡張末期圧の上昇を評価することにより確認できた。以上、当該研究計画の初年度予定をおおむね順調に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
心不全においては交感神経機能の賦活が心不全の増悪や予後の悪化に密接に関連しており、その機序として中枢性化学反射感受性の亢進があげられる。交感神経活動の亢進が化学受容器感受性を亢進させ、この化学反射の亢進が交感神経をさらに賦活する悪循環が形成されていると考えられるが、腎機能障害をともなう慢性心不全において交感神経機能の日内リズムの異常と中枢性二酸化炭素化学反射感受性の関連は未だ不明である。次年度の研究計画では、腎機能低下を伴う心不全モデルラットにおいて化学反射感受性の評価を行い自律神経機能異常の解明を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
心不全における腎機能障害と交感神経機能賦活の機序を検討する目的で、中枢におけるレニン-アンジオテンシン系と二酸化炭素化学反射感受性の関連を調べる。ラットにアンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与し心不全および腎不全併発ラットにおける二酸化炭素化学反射感受性を検討する。本研究遂行のため研究費は主に、小動物用送信機(再生費)、二酸化炭素ガス、薬物等に使用される予定である。
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