研究課題/領域番号 |
23591033
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井上 博 富山大学, 大学院医学薬研究部(医学), 教授 (60151619)
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研究分担者 |
平井 忠和 富山大学, 大学病院, 講師 (10303215)
城宝 秀司 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (90334721)
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キーワード | 心不全 / 慢性腎臓病 / 交感神経機能 / 化学反射感受性 |
研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)は心血管系イベントのリスクであり、心筋梗塞後の左室機能低下例では、腎機能の悪化に伴い予後が悪化する。心不全の進展過程には交感神経活動の亢進が重要であり、今回、腎機能障害ラットに心筋梗塞による心不全モデルを作成し、交感神経機能の賦活と中枢性化学反射感受性の関連について検討した。 8週令の雄性ラットを用いて5/6腎摘除し、10週令において左冠動脈結紮による心筋梗塞を作成した。術後4週間後、腹部大動脈に挿入した超小型テレメ-タ-から送信される動脈圧波形を覚醒・無拘束状態で24時間連続的に記録し、拡張期血圧のスペクトル解析から得られる低周波成分(0.15-0.79Hz)を交感神経活動(LFdp)の指標とした。また交感神経機能と二酸化炭素(CO2)化学反射感受性の関連を検討するためラットのケ-ジ内に13%CO2・20%O2の混合気体を1時間毎に2分間注入し、CO2に対する反応を調べた。 心不全 (CHF)ラット(n=7)の交感神経活動の日内リズムは、日中の睡眠期に比べ、ラットの覚醒時間帯(16 - 20時)で高く(LFdp; 722±124 vs 823±181(SE) mmHg2, p<0.05)、この覚醒時間帯の交感神経機能の亢進は、CKDを合併した心不全ラットCKD+CHF群(n=6)で、960±115(SE) mmHg2(LFdp)とさらに増大していた。ラットの覚醒時間帯におけるCO2化学反射感受性を評価したところ、CKD+CHF群でΔLFdp1027±256(SE) mmHg2とCHF単独群(ΔLFdp 449±144(SE) mmHg2)に比べ有意に亢進していた。心不全に慢性腎臓病を合併すると覚醒期の一過性交感神経機能の賦活が亢進(モ-ニングサ-ジ)し、その背景に中枢性化学反射感受性が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心不全の心血管系イベントには日内変動があり、イベント発症と関連する自律神経機能異常を評価するためには昼夜にわたる長期間の観察が重要である。今回、ラットの慢性腎臓病(CKD)モデルに心筋梗塞を作成し、腹部大動脈内に挿入した超小型テレメ-タ-により覚醒・無拘束状態で、24時間連続的に自律神経活動を評価した。さらに中枢性二酸化炭素化学反射感受性の評価を行うためラットケ-ジ内に13%CO2・20%O2の混合気体を1時間毎に2分間注入し、注入5分後にエア-ポンプで二酸化炭素を強制的に排出させることにより、自動的に二酸化炭素負荷をおこなった。この間歇的二酸化炭素負荷システムにより、CKDを有する心不全モデルラットの化学反射感受性を評価することができた。 また心筋梗塞後の左室リモデリングが、CKD合併心不全モデルラットにおいて増悪することが心エコ-による心機能評価で観察された。実験終了後の左室非梗塞部の心筋組織においても、CKD合併ラットにおいて心筋の線維化および残存心筋の肥大をみとめたことから、慢性腎臓病は心不全の進展過程に重要な影響を与えることがわかった。以上、当該研究計画の今年度予定をおおむね順調に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
心不全では交感神経機能の賦活が心不全の増悪や予後に密接に関連しているが、腎機能障害合併例では、心腎連関によりさらに心不全の病態が悪化する。その機序として交感神経系のほか、レニン-アンジオテンシン・アルドステロン(RAS)系の亢進が示唆されている。本実験モデルラットにおいてβ遮断薬やRAS系阻害薬を投与し慢性腎臓病における心不全の進展過程を抑制できるかどうかを今後、検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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