研究課題
心臓と腎臓には機能的連関があり、心不全に慢性腎臓病を合併すると心血管系イベントのリスクが高くなる。この背景にはレニン-アルドステロン系などの心腎共通の調節因子が存在し、軽度の慢性腎臓病でも交感神経機能が賦活し心不全の病態を悪化させる。平成23年度および平成24年度の研究では、慢性心不全の交感神経機能の賦活には日内リズムがあり、心不全に慢性腎臓病を合併すると交感神経機能がさらに賦活することがわかった。またこの交感神経の賦活には中枢のCO2化学反射感受性が関与していることがわかった。今回、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いて、慢性腎臓病を合併した心不全ラットの交感神経機能の賦活におよぼす影響を検討した。雄性ラットを用いて5/6腎摘除し、さらに左冠動脈結紮による心筋梗塞を作成し慢性腎臓病(CKD)に心不全(CHF)を合併したCKD+CHFラットを作成した。術後、腹部大動脈のテレメ-タ-から送信される動脈圧波形を覚醒・無拘束状態で24時間連続的に記録し、拡張期血圧のスペクトル解析から得られる低周波成分(0.15-0.79Hz; LFdp)を交感神経活動の指標とし日内変動を評価した。CKD+CHFラット(n=6)の交感神経活動は、日中の睡眠期に比べ、ラットの覚醒時間帯(16 - 20時)で高く(LFdp; 1040±123 vs 631±64(SE) mmHg2, p<0.05)、CHF単独群(LFdp;823±181mmHg2)よりも亢進していた。CKD+CHFラットにおいて2週間ARB(テルミサルタン 2mg/kg/day)を経口投与したところ、覚醒時間帯のLFdpは、758±58 mmHg2と抑制された(p<0.05)。慢性腎臓病を合併した心不全ラットにおいて観察された覚醒時間帯の一過性交感神経機能の亢進がARBにより抑制できることがわかった。
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