研究課題
【目的】副作用や侵襲性を軽減した、より患者さんに優しい血管再生療法の実践のため、糖鎖工学を利用した標的血管組織への骨髄細胞輸送システムの開発を目指し、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)修飾リポソームの用いた選択的薬物・細胞輸送システムの可能性について検討した。【方法】GlcNAc修飾リポソームは、エクストルーダーを用いて直径100nmの大きさで、リポソーム表面にGlcNAcポリマーをコーティングすることによって作製した。コントロールとしてグルコース(MA)を修飾したリポソームを作製した。マウスの下肢動脈の内皮細胞を剥離した血管傷害モデルマウスを作製し、血管傷害部位へのGlcNAcおよびMA修飾リポソームの集積を観察した。【結果】GlcNAc修飾リポソームおよびMA修飾リポソームの培養血管平滑筋細胞への取り込みをフローサイトメトリーで解析したところ、GlcNAc修飾リポソームの血管平滑筋細胞への高い相互作用が観察された。血管傷害モデルマウスにGlcNAc修飾およびMA修飾リポソームを尾静脈より投与し、血管傷害部位への集積を組織切片により観察したところ、傷害血管壁にMA修飾リポソームに比し、GlcNAc修飾リポソームの高い集積が観察された。正常血管ではリポソームの集積は観察されなかった。【結語】GlcNAc修飾リポソームを用いることで、血管傷害部位選択的な薬物または細胞輸送システムが可能となる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度の当初計画では、プロジェクトIとして、傷害血管部位への細胞輸送システムの開発を予定していた。研究実績の概要に示したとおり、GlcNAc結合型レクチンを利用して、骨髄細胞を虚血下肢の血管傷害部位へ集中的に集積させることができ、今後の血管再生療法に応用できる可能性が示された。
プロジェクトIIとして、脂肪組織由来幹細胞を用いた再生治療開発の検討を予定している。ヒトを対象とした血管再生の臨床治験を実施する以前に、マウスおよびハムスターの脂肪組織由来幹細胞を採取、培養する系を確立し、マウスおよびハムスターの虚血下肢または心筋梗塞モデルに移植し、治療効果と安全性について評価する予定である。
当初の計画より外注検査料、動物飼育費などが安価に研究ができたため、次年度使用額が生じた。次年度の研究経費としては、虚血下肢および心筋梗塞モデルとして用いるマウスおよびハムスターに関する動物代と飼育費、これら動物から脂肪組織由来幹細胞を採取し、培養するための培養プレート、培養液、液体窒素代、脂肪組織由来幹細胞が発現する各種マーカーを解析するための抗体や試薬、実験用手袋やピペットの購入を予定している。
すべて 2011
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