研究課題
<目的> ラットの脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRC)を採取、培養する系を確立する。さらに、培養したADRCを心筋梗塞モデルラットへ移植し、有効性・安全性を検証する。<方法・結果>GFPを全身発現したラット(GFPラット)の皮下脂肪組織からADRCを培養した。1匹のラットから約1x10の6乗のADRCを採取することが出来、4継代まで培養することにより5x10の6乗まで増殖出来た。培養ADRCはGFP陽性(>99%)、CD29陽性(>99%)、CD90陽性(96%)であった。この細胞をサイトカインカクテル(ZVAD、pinacidil、cyclosporin A、IGF-1、matrigel)で処理した後凍結・融解を行ったところ、融解後の細胞の生存率は88.5±6.4%であった。さらに同系の野生型ラットに心筋梗塞モデルを作製後、この細胞を梗塞部位に移植したところ、サイトカインカクテルで処理した細胞は未処理の細胞に比べて、生着率が高い傾向にあった(生着細胞数166±30 vs. 91±27, P=0.13)。<結語>GFPラットから安定的にADRCを採取し培養、凍結保存することが出来た。さらにサイトカインカクテルを用いることにより、細胞の生着率を向上させられることが示唆され、今後移植後の心機能改善効果と安全性について検討していく。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の当初計画は、脂肪組織由来間葉系前駆細(ADRC)胞移植療法の有効性・安全性を検証することであった。基礎研究では、ラットのADRCを採取、培養する系を確立した。培養したADRCを心筋梗塞モデルラットへ移植し、治療効果の検証を開始した。
ラットの心筋梗塞モデルにおけるADRC移植の有効性、安全性について引き続き検証していく。また、末梢動脈疾患による重症虚血肢患者に対するADRC移植療法の有効性、安全性を検証する臨床試験を平成25年度中に開始する。さらに臨床試験で余剰になったADRCを長期保存し、将来の血管再生療法に再利用可能か検証する。
該当なし
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