研究課題
前年度までの研究で、糖尿病ラットの灌流心を用いた実験において、糖尿病心筋では非糖尿病心筋に比べて虚血による心筋障害が少ない(虚血耐性を有する)こと、虚血時に心筋細胞内の細胞質とミトコンドリアにレニンが発現し、特にミトコンドリアでの発現が亢進していることを明らかにした。この糖尿病心筋におけるレニンの発現による虚血耐性は、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)によって抑制されなかったが、直接レニン阻害剤(DRI)により抑制された。これらの結果は、糖尿病心筋の虚血耐性には、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を介した経路とは異なる、細胞内レニンによる直接効果が関与していることを示唆している。最終年度は、糖尿病心心筋の虚血耐性に細胞内レニンが関与する機構を明らかにするために、ミトコンドリア機能と細胞内レニンとの関連について検討した。虚血中に発現が増加しミトコンドリアの膜電位を脱分極させる脱共役タンパク質(UCP2)は糖尿心筋では発現が抑制されていた。心筋細胞にレニンを投与するとUCP2の発現は抑制され、一方で、酸化的リン酸化の指標となるNADP/NADPH比はレニンの投与により増加した。さらに、レニンは心筋の生存に必要な高エネルギーリン酸(ATP)の産生を保持することも明らかにした。これらの結果は、レニンがUCP2の抑制と酸化的リン酸化の活性化により、虚血中のミトコンドリア膜電位の脱分極を抑制してミトコンドリア機能を保持することを示唆している。本研究により、糖尿病心筋では、細胞内レニンがミトコンドリア機能の保持と細胞死の予防に関与していることが明らかになり、従来のレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系とは異なる細胞内レニンによる生理的および病態生理的役割という新しい概念を提唱している。
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