研究課題/領域番号 |
23591040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸本 千晴 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70169845)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 拡張型心筋症 / 心不全 / Fcγ レセプター / 動脈硬化症 |
研究概要 |
1.急性心筋炎モデル 平成23年度においては3種類のFcγRKOマウスを用いて、FcγRの修飾・制御を検討した。1)FcγRIIB, FcγRIII, FcγR(全てのFcγRサブファミリーの欠損)KOマウス3種類にブタ心筋ミオシンにより急性心筋炎・心不全を惹起した(各n=10)。またワイルドタイプ(WT)マウスにも心筋炎を惹起した(n=10)。2)1)で用いた心筋炎・心不全群に対して、それぞれ免疫グロブリン(Ig)で治療を行った。投与方法は既報に則った(1mg/kg/day、腹腔内投与)。観察期間は21日間とした。3)心筋炎・心不全の重症度が、WTのマウスに比較して、FcγRIIBKOマウスで軽減したが、FcγRIIIおよびFcγRのKOマウスでは軽減しなかった。また、免疫グロブリン治療により、FcγRIII およびFcγRのKOマウスではその程度が軽減したが、FcγRIIBKOマウスでは不変であった。4)FcγRIIBKOマウスでの心筋炎・心不全の軽減を確認後、WTマウスのリンパ球(1x107 個)を移注した同マウスの病変の程度を検討した。WTのリンパ球を移注されたFcγRIIBKOマウス心筋炎では、病変はFcγRIIBKOマウス心筋炎に比し軽減した。5)心筋炎の病変の程度の評価には、心エコー法のみならず免疫・病理学的検討を用いた。免疫・病理学的検討には、通常のH.E.染色のほかマクロファージやT-リンパ球(CD4, CD8), ICAM-1、P-selectin などの接着分子の免疫染色、NF-κBやeNOSのウェスタン法とRT-PCRなどを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きな実験的トラブルもなく、計画の進展も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
急性心筋炎・心不全で得られた結果が、一般臨床では最も多い心障害である慢性心不全でもあてはまるかということを検討する。1)平成23年度のミオシンによる急性心筋炎の場合と同じく、FcγRIIB, FcγRIII, FcγRのKOマウスに、アドリアマイシン(5~10mg/kg/day, 3回/週)およびLPS(10mg/kg/day)の腹腔内投与を行い、それぞれ慢性心筋障害・心不全と慢性敗血症モデルを作成する。 WTのマウスでも、それぞれアドリアマイシンとLPS投与の心不全を作成する(各n=10~15)。2)FcγRIIBKOマウス群では、別に用意したWTマウスよりのリンパ球(1×107 個)を移注し、それぞれアドリアマイシンとLPS投与による心不全を作成する(各n=10~15)。3)観察期間は約30日~45日間とする。心不全の評価には、心エコー法による左室内腔計測と左室収縮能・拡張能およびdp/dtの解析を行う。4)屠殺時には、心重量の測定、通常の心病理の他、NF-κB, eNOSなどのITIMの下流の分子の発現をウェスタン法やRT-PCRで検討する。また、必要があれば、SHIP-1のリン酸化の有無を調べる。FcγRIIBKOマウスでの心不全の増悪とNF-κBの発現低下が予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
1) apolipoprotein-Eノックアウト(apo-E-/-)マウスとFcγRKOを交配し、10世代後にそれぞれの純系を得る(FcγRIIB, FcγRIII, FcγRのダブルノックアウトdKOマウス3種類)。apo-E-/-も準備する(各n=10~15)。2) apo-E-/-およびapo-E-/-と交配したFcγRIIB, FcγRIII, FcγRのdKOマウス4群を高脂肪食で8~16週間飼育し、動脈硬化症を誘導する。3) 動脈硬化の重症度が、apo-E-/-のマウスに比較して、FcγRIIBdKOマウスで軽減することが予想される。一方、FcγRIIIおよびFcγRdKOマウスでは軽減しないことが予想される。また、免疫グロブリン治療により、FcγRIII およびFcγRdKOマウスでは軽減するが、FcγRIIBのdKOマウスでは不変であることが予想される。
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