研究課題/領域番号 |
23591041
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
錦見 俊雄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291946)
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研究分担者 |
桑原 宏一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30402887)
中川 靖章 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70452357)
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キーワード | BNP / アドレノメデュリン / 糖鎖 / 心不全 / 脂肪 / processing |
研究概要 |
1. proBNPは血中に多く含まれ、現在のBNPの測定系ではproBNPも交叉している。proBNPの多く含まれる症例と少ない症例では病態に差がある可能性を以前報告した。競合的免疫蛍光法を用いたproBNPの測定系開発を行い、健常者で検討したところBNPの免疫活性の約70%がproBNPであった。また健常者においてproBNPは年令とともに増加する事を示した。 2. 腎不全で透析を行っている患者を対象にproBNPを透析前後で測定した。他にANP、BNP等も合わせて検討した。透析後proBNP、ANP、BNPは低下したが、いずれも体液量の指標には相関せず、分子量の大きさに依存して低下した。 3. ラット心筋細胞にヒトproBNP遺伝子をレンチウイルスを用いて遺伝子導入し、培養液中のproBNP/BNP比を測定することにより、ヒトproBNPのプロセシングを評価した。またproBNPのO型糖鎖付着部位であるThr, Ser残基をAlaに変えた遺伝子変異体を作成し、どこの糖鎖付着がprocessingに影響をもつのかを評価した。糖鎖が全く付着しない変異体を作成すると、processingはほぼ100%起こる事からproBNPのprocessingに糖鎖付着が極めて重要である事が示唆された。またラットのproBNPはprocessingがよく起こるが、この理由として、糖鎖の付着部位が関係している事を示した。 4. アドレノメデュリンのコンディショナルKOマウスを作成する事に成功した。AMのfloxマウスを樹立し、aP2をプロモーターにCreを過剰発現したマウスに掛け合わせたところ、脂肪細胞特異的にAMの遺伝子発現が低下したマウスを得る事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成度はほぼ良好である。 proBNPの簡便な測定系の構築に成功し、現在種々の症例のサンプリングを行い、proBNPの測定を行い解析中である。 processingについても、proBNPのprocessingにfurinが重要である結果を示す事が出来た。またproBNPのprocessingに糖鎖付着が決定的な役割を演じている事もproBNPの変異体を用いて示す事が出来た。今後、種々の変異体を用いて、proBNPに付着するどこの糖鎖付着が最も重要な部位であるかを示す予定である。 アドレノメデュリンの脂肪細胞特異的なコンディショナルKOマウスの樹立に成功した。今後このマウスを用いてアドレノメデュリンの脂肪細胞に置ける意義を明らかしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
何故proBNPの比率が高い症例が存在し、その臨床的な意味を検討していく予定である。proBNPの非競合的免疫蛍光法を用いたproBNPの測定系開発に成功したのでこれを用いて、多方面からの解析を進めていきたい。特に急性心不全の患者でproBNPの高い症例と低い症例でどのような差が存在するのかを解析予定である。 心房筋細胞、心室筋細胞での培養系においてヒトproBNPの遺伝子導入を行い、メディウムを上記のproBNPの測定系で解析する系を開発したので、これを用いてさらに解析を進めていきたい。 proBNPに付着する糖転移酵素の同定も試みる予定である。現在、いくつかの糖転移酵素に絞り込めており、siRNA等を用いて検討予定である。 アドレノメデュリンも脂肪細胞特異的なコンディショナルKOマウスを樹立できたので、これを用いて血圧、脂肪代謝、インスリン感受性等種々の検討を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
proBNPへの糖鎖の付着とprocessingとの関係では、心筋細胞の培養系で評価を行っているので、新生仔ラットの購入、FCS、プラスチック器具などなど細胞培養に必要な種々の消耗品、分子生物学に必要な試薬、消耗品が必要である。また糖転移酵素の同定には種々のsiRNAを用いた検討を考えており、この購入費用、リアルタイムPCRに必要なプライマーも必要である。 ヒト心不全のproBNPの研究では測定に必要なプラスチック器具や、消耗品、さらに同時に評価を予定しているcGMP、ANP等の外注費用(試薬を購入して測定するよりも、費用はほぼ同じで、労力が省ける)が必要である。 アドレノメデュリン細胞特異的なKOマウスの研究では、糖代謝、脂質代謝等への影響を見ていく予定なので、これらを測定する試薬、kitの購入、マウスの飼育費用などに当てる予定である。 さらにこれらの研究結果を国内外の学会で発表予定であるので、これに必要な旅費にも充てる予定である。
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