研究課題/領域番号 |
23591043
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野間 玄督 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00379893)
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研究分担者 |
東 幸仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40346490)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / シグナル伝達 / 循環器・高血圧 / 発現制御 / 臨床 |
研究概要 |
本研究は,ROCK活性の亢進がどのように動脈硬化の発症・維持・進展に影響を及ぼすかをトランスレーショナル研究によって検討するものである.(1)当該年度における遺伝子改変動物を用いた研究では,ROCK2ノックアウトマウスがROCK1ノックアウトと比して一過性中大脳動脈閉塞による脳虚血領域が有意に低下しており,またその機序は内皮細胞におけるeNOSの発現とリン酸化の亢進によるものであることを明らかにした.更に,eNOS発現の亢進がeNOS mRNAの安定化によることも確認したが,eNOS mRNA安定化の詳細機序については現在も検討中である.これまでの検討では,特にROCK2の阻害によってeNOSの発現と活性が共に亢進し,心血管疾患に対しては保護的に働くことが示された.(2)一方,当該年度における臨床研究では,白血球ROCK活性が血管ROCK活性の代用になることを確認し,また白血球ROCK活性は血管内皮機能のみならず,10年間の冠疾患の罹患と死亡のリスクスコアであるフラミンガムスコアと相関するという所見を得た(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2011).現在,冠危険因子や心血管疾患を有する対象群におけるクロスセクショナル研究,そして生活習慣改善や薬剤を用いた介入試験を続けており,ヒト白血球ROCK活性のバイオマーカーとしての有用性を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物を用いた研究では,ROCK1およびROCK2ノックアウトマウスを用いた研究における共同研究者や研究分担者との意見交換がとても上手く進行して充実していること,またそれぞれの分担バランスが良く,順調に結果が出ていることがあげられる。また臨床研究においては,まずは被験者サンプルを含めた被験者数が十分であること,続いて得られた結果が仮説と一致していることがあげられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,1).ROCK1およびROCK2ノックアウトマウスより培養した内皮細胞を用いたin vitro検討,そして一過性脳虚血再灌流障害(一過性中大脳動脈閉塞による) in vivo検討においては,全身性ROCK2ノックアウトマウスを用いた検討から,内皮特異的ROCK2ノックアウトマウスを用いた検討を中心にする予定である.2) 臨床研究における,ヒト血管およびヒト白血球内ROCK活性の検討では,引き続き対象は心血管病リスクを有さない健常人,および冠危険因子を有する明らかな心血管合併症を有さない軽症動脈硬化症例にて検討を行うが,薬剤や生活習慣の改善といったインターベンションによる介入試験の場合には,プレチスモグラフィーによる侵襲的な血管ROCK活性の検討よりも,より非侵襲的な白血球ROCK活性による検討を中心とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,1).ROCK1およびROCK2ノックアウトマウスより培養した内皮細胞を用いたin vitro検討,そして一過性脳虚血再灌流障害(一過性中大脳動脈閉塞による) in vivo検討,および臨床研究におけるヒト血管およびヒト白血球内ROCK活性の検討を同時に進めて行くのであるが,in vitroとin vivo検討をより早期に完成させるべく,研究費の使用もそちらを中心とする予定である.
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