研究課題
虚血性心疾患患者に対して薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈ステント留置術が治療の主流となっている。しかしながら年率約0.2%の頻度でステント血栓症の発症が報告されており懸念事項となっている。抗血小板薬の2剤併用療法はステント血栓症の発症予防に有用であるが、ステント留置術後いつまで継続する必要があるのか、非心臓手術時に安全に休薬できるか、個々の患者で判断する必要があり、新たな指標が必要とされている。本研究はOCTの3次元再構成法と組織性状のカラーマッピングを用いて、ステント血栓症のリスクを階層化できる新たな分類法を確立し、日常臨床に応用できるようなソフトウェアを開発することを目的とする。平成23年度はこれまで当院で取得したステント留置後のOCT画像を用いて3次元再構成を行い、ステント被覆程度の新たな分類法を考案した。その分類法と従来の定量解析を比較し良い相関があることを示した。3次元OCT画像上でステントを明瞭に描出するためにはステントの検出が必要であるが、従来の手作業による検出では膨大な時間を要した。我々はステントを自動検出するソフトウエアを開発した。これにより大幅に3次元OCT画像を作成する時間の短縮に成功し、検査中もしくは検査後数分で3次元画像を作成しステントの状態を把握することができるようになった。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、3次元再構成画像上でステントストラットの被覆状態を分類する方法を考案し定量解析法と良い相関があることを示した。この方法を用いてエベロリムス溶出性ステント留置後の血管内腔表面の治癒状態を評価できることを示した。ステント検出を自動化するソフトウエアを開発し、3次元OCT作成にかかる時間を大幅に短縮した。それにより日常臨床で3次元OCTでステントを評価できることを報告した。2種類の異なるステント(シロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステント)間で留置後の血管壁の治癒過程に差があるか3次元OCTを用いて、検討する予定であったが、シロリムス溶出性ステントが使用出来なくなった。このためバイオリムス溶出性ステントとエベロリムス溶出ステントで比較することを予定している。以上からおおむね順調に進行していると考える。
平成24年度は、異なる2つの薬剤溶出ステントで留置後1年目のOCT画像を取得し、新たに提唱した3次元OCT分類でステント留置後の血管内腔表面の治癒状態を評価できるか検証する。また、OCT画像から組織性状を評価し、3次元OCT画像上にカラーマッピングする仕組みに着手する。
平成23年度に計上したOCTカテーテル費用は、前述のとおりシロリムス溶出ステントが使用出来なくなったため、購入しなかった。現在、シロリムス溶出ステントにかわってバイオリムス溶出性ステントを用いて研究中であり、OCT評価は平成24年6月から計画しており、繰り越した費用と平成24年度に計上した費用を合わせてOCTカテーテルを購入予定である。
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