研究課題/領域番号 |
23591048
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大木元 明義 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00403832)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心筋症 / 遺伝子解析 / 心血管事故 / リスク層別化 |
研究概要 |
目的:拡張型心筋症における心血管事故(心臓死,心房細動,心不全)と既知の候補遺伝子多型との関連を探索し,リスク層別化が可能かどうかを明らかにすることである.方法:対象は拡張型心筋症と診断された83名(平均年齢59歳,男性64名,平均追跡期間45ヶ月)である.アドレナリン受容体関連候補遺伝子多型の選択にはPubMedを使用した.拡張型心筋症との有意な関連が報告された遺伝子多型を検索した結果より,β1アドレナリン受容体遺伝子多型であるADRB1 Ser49Gly, Arg389Glyとノルエピネフリントランスポーター遺伝子多型であるNET T-182Cの計3多型をTaqMan法で解析した.心血管事故の定義は心臓死,心不全・不整脈・脳梗塞による緊急の入院とした.まず,各遺伝子多型と心血管事故との関連性の検討した.次ぎに,現在までの報告でリスク多型(ADRB1 49S保持者,389Arg保持者,NET -182C/C)とされた遺伝子多型の保持数と心血管事故との関連を解析した.結果:各種遺伝子多型単独での解析においては,NET -182CC遺伝子多型の頻度が心血管事故発症群で有意(P=0.04)に高かったが,他の遺伝子多型では有意差はなかった.Kaplan-Meier法(図参照)でリスク遺伝子多型の保持数と心血管事故発症との関連を解析したところ,リスク遺伝子多型を3個すべて保持する群では,心血管事故の発症が有意(log rank test P=0.01)に高かった.Cox比例ハザードモデルにおいても3個のリスク遺伝子多型をもつことは,3.98倍の心血管事故オッズ比であった(P=0.028)結論:拡張型心筋症において3種のアドレナリン受容体関連遺伝子多型を解析することは,心血管事故発症のリスクの層別化に有用な可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
候補遺伝子多型解析は順調にすすんでいる.しかし,DNAチップを用いた網羅的遺伝子多型解析により,未知の病態修飾遺伝子を探索することが,すすんでいない.
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今後の研究の推進方策 |
特発性心筋症を対象にGenome-Wide Human SNP Array 5.0を用いて,網羅的遺伝子解析を施行する.循環動態的に対極に位置するこれら心筋症において,各種心血管事故と既知,または未知の遺伝子多型との相関を解析する.また,ヒトゲノムバリエーションデータベース(http://gwas.lifesciencedb.jp/index.Japanese.html)を利用し,特発性心筋症と他の疾患との遺伝子多型頻度の差異を評価する.さらには網羅的遺伝子多型解析で相関が有意となった多型について,その保持数を検討し,更なるリスク層別化が可能かどうかを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
網羅的遺伝子解析のためのGenome-Wide Human SNP Array 5.0の購入とゲノムデータ解析用のソフト購入,研究成果発表と最新の情報入手のための学会出張費用に使用させていただく予定である.
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