研究課題/領域番号 |
23591052
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 講師 (10389570)
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研究分担者 |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
畠山 金太 宮崎大学, 医学部, 准教授 (60325735)
長町 茂樹 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40180517)
鬼塚 敏男 宮崎大学, 医学部, 教授 (60108595)
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キーワード | 動脈硬化 / 糖代謝 / マクロファージ / 炎症 / 細胞外マトリックス |
研究概要 |
ヒト腹部大動脈瘤壁での糖代謝亢進のソースはマクロファージであったことから、同細胞の糖利用を阻害することにより、病態を修飾できるのではないかと考えた。マクロファージU937細胞を用いて糖代謝阻害薬2-deoxyglucose (DG)の作用機序についてDNAマイクロアレイ法を用いて評価した。フォルボールエステル刺激下で、炎症、細胞外マトリックス、細胞接着、血管新生に関わる遺伝子発現が変化した。2-DG添加によりこれらの遺伝子発現がさらに変化した。特に炎症性サイトカインIL-6やMCP-1、細胞外マトリックス消化酵素であるMMP-9発現が著減した。一方、細胞保護効果を発揮するPPAR-gamma-co-activator-1やsirtuin-1遺伝子発現が増加することを見出した。これらの変化はreal-time RT-PCRでも確認した。ヒト腹部大動脈瘤壁を利用したex vivo cultureでは、2-DG ( 2 mg/mL)の培養液中への添加により、添加96時間後の培養液中MMP-9活性やIL-6濃度が減少した。さらに塩化カルシウムモデルとは異なる動脈瘤モデルを用いて、2-DGの動脈瘤抑制効果を検討した。アポリポプロテインE遺伝子欠失マウスにアンジオテンシンII(1000 ng/kg/min)を1か月間投与すると、腎動脈分岐部上部に動脈瘤が形成された。瘤形成の進行に伴い、瘤壁内GLUT-3蛋白発現が亢進した。2-DG(1g/kg/day)を連日28日間腹腔内投与すると瘤サイズは有意に減少し、この抑制効果はマクロファージの瘤壁内浸潤やMCP-1発現、MMP-9活性の低下と関連していた。塩化カルシウム塗布モデル同様、血管外膜側の炎症機転が瘤形成のメカニズムに関わっていると考えられ、同部位の糖代謝を制御することで炎症を抑制して、腹部大動脈瘤の形成を阻止できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当研究成果の第一報を論文として公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)腹部大動脈瘤患者(手術拒否例、手術に至らない小動脈瘤例)に対してPET-CTを撮影し、その後、抗炎症作用を有するアンジオテンシンII受容体拮抗薬、スタチン製剤、マスト細胞抑制作用を有する抗アレルギー薬を6か月間投与する。6か月後に再度、PET-CTを撮影して効果を評価する。同プロトコールは、当大学「医の倫理委員会」の承認を得ている。期間中、手術に至った場合は、術中に組織を入手して病理組織解析を加える。 (2)新たな腹部大動脈瘤マウスモデルを作成して動脈瘤形成機序を探索して、新規内科的治療の基盤研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)PET-CT撮影費用(2回/人あたり)。組織関連試薬。 (2)マウス飼育に伴い発生する費用。組織解析、蛋白、遺伝子解析関連試薬。 (3)国内外での発表に伴う旅費 (4)論文校正ならびに投稿に関わる費用
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