研究課題/領域番号 |
23591052
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 講師 (10389570)
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研究分担者 |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
畠山 金太 宮崎大学, 医学部, 准教授 (60325735)
長町 茂樹 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40180517)
鬼塚 敏男 宮崎大学, 医学部, 教授 (60108595)
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キーワード | 血管生物学 / 動脈瘤 / マクロファージ / 解糖系 |
研究概要 |
本研究は第1に腹部大動脈瘤壁の炎症基盤をPET-CTで評価し、瘤壁の組織学的・分子生物学的な解析と併せて腹部大動脈瘤の発症、進展・破裂の病態・機序を明らかにすること、第2に瘤壁内のマクロファージの解糖系に着眼し、同細胞の解糖系制御による薬物治療法開発の基盤を確立することであった。人工血管置換術を行う予定の腹部大動脈瘤患者17名にPET-CTを行ったところ、対照群(23名)と比べ18-fluorodeoxyglucose (FDG)の瘤壁内への取り込みが増加することを見出した。術中に瘤壁の一部を採取し、18-FDG取り込み部位に対応した瘤壁のglucose transporter (GLUT)-3の蛋白発現の間には有意な相関のあることを明らかにした。免疫染色ではGLUT-3蛋白発現の主な細胞はCD68陽性マクロファージであった。マクロファージはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9の主な産生源であり、腹部大動脈瘤の進展・破裂に関与することが知られる。そこで、われわれはマクロファージの解糖系(glycolysis)を制御することにより腹部大動脈瘤の進展抑制効果を発揮できないかを培養マクロファージ細胞ならびにマウス大動脈瘤モデルを用いて検討した。グルコースアナログである2-デオキシグルコース(2-DG)を培養マクロファージ細胞の培養上清へ添加するとMMP-9活性が低下した。また、マウス腹部大動脈周囲に塩化カルシウムを塗布すると動脈瘤が形成されるが、このモデルへ2-DG(1 g/day)を28日間、腹腔内投与すると瘤形成が抑制されることを見出した。2-DGによる瘤形成抑制効果は、別の動脈瘤モデルであるアポE欠損マウスを用いた実験系においても確認することができた。これらの実験結果から、マクロファージの解糖系を制御することにより動脈瘤の進展を抑制できる可能性が示唆された。
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