研究課題/領域番号 |
23591053
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
北 俊弘 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70315365)
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キーワード | アドレノメデュリン / 末梢動脈疾患 / 末梢血単核球移植 / 血管新生 |
研究概要 |
末梢動脈疾患による重症下肢虚血の治療には限界があり、特に血行再建術の対象とならない患者への治療法は確立していない。我々は、このような患者に対して、末梢血単核球移植術とアドレノメデュリン持続静注(1.5 pmol/kg/min、1日8時間 X 2週間)併用治療を考案した。アドレノメデュリンの併用効果を厳密に検討するため、アドレノメデュリンとプラセボを用いた二重盲検法を採用し、本プロトコールの有効性、安全性評価のための臨床試験をスタートした。現在までに、2名の患者(ホモシスチン尿症を基礎疾患とした閉塞性動脈硬化症患者とバージャー病患者)に対して、本プロトコールによる治療を実施した。各患者には末梢血単核球移植術とアドレノメデュリン持続静注を2クール連続して実施(総治療日数28日間)し、自覚症状の改善、下肢血流の改善が得られ、治療後少なくとも2ヶ月間は効果が持続している。今後、血管造影により形態学的な効果も検討していく予定である。一方、本治療に伴う有害事象(過度の血圧低下など)は認められなかったが、二重盲検法のため投与薬剤が不明であり、現時点では安全性に関する判定は不能である。今後も本臨床試験を継続し、できるだけ早期に有効性、安全性を確認していく予定である。末梢血単核球移植術は2回連続して実施しているが、1回目と2回目では移植用の末梢血単核球の遺伝子発現に興味ある変化がみられている。 一方、同じ投与方法で行っている潰瘍性大腸炎患者に対するアドレノメデュリン持続静注療法の患者数は臨床効果判定に必要な症例数に達し、有害事象は認められなかったことから、アドレノメデュリン持続静注の安全性に関してはほぼ確立したと考えられる。アドレノメデュリンの臨床応用は確実に前進していると考られ、本治療法は、近い将来、高度医療への展開を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
学内の研究体制、薬品等の調達は完了したが、患者の募集がなかなか進展せずに、十分な数の患者を集めることが難しかった。当大学も含めて、近年、下腿の血管に対しても積極的に血管内治療やバイパス術を試みるようになってきており、血管新生療法の適応となる患者がかなり絞り込まれてきている。結果として、血管新生療法を考慮する患者は多くの合併症を有することとなり、末梢血単核球移植術とアドレノメデュリン持続静注が実施できる患者は非常に少ないのが実態であり、患者数を確保するのはかなり困難である。
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今後の研究の推進方策 |
さらに積極的に患者のリクルートを推進するべく、広報活動に努力していきたい。次年度いっぱいは、当初のプロトコール通りに研究を進めていく予定である。しかし、患者の数があまりに少なく二重盲検法による比較検討が困難となる場合には、オープン試験として末梢血単核球移植術+アドレノメデュリン持続静注のみを実施し、本治療法を高度医療として展開していく予定である。なお、宮崎大学では「宮崎大学と地域の特性を基盤とした臨床研究」として、平成26年度から30年度まで、本治療法を含めた臨床試験を援助していくことが決定しており、今後とも継続的に研究推進が可能な状況になっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度いっぱい患者のリクルートを継続し、当初のプロトコールにのっとり研究を推進する予定である。
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