研究課題
睡眠時無呼吸は、心血管疾患の重要な危険因子であるが患者の殆どは診断されないまま放置されている。睡眠時無呼吸の標準的な診断には睡眠ポリグラフ検査を要するが、検査に手間や費用がかかることが、患者の検出を妨げている。そこで、睡眠ポリグラフ検査の必要な症例のスクリーニングの手段として、循環器疾患患者を中心に普及しているホルター心電図から睡眠時無呼吸を検出するアルゴリズム、autocorrelated wave detection with adaptive threshold (ACAT)を開発し、その信頼性の検証、有用性の実証、臨床応用を行った。信頼性の検証には、睡眠時無呼吸を疑われ睡眠ポリグラフ検査を受けた862例を対象に、ACATから得られる心拍数周期性変動(CVHR)の頻度と、睡眠ポリグラフ検査から得られる無呼吸低呼吸指数(AHI)との関連を調べた。CVHR ≧15/時を判定基準とすると、AHI≧15の中等症以上の睡眠時無呼吸患者を感度83%、特異度88%で検出することができた。ACATの有用性の実証には、1運送会社の全男性トラック運転手165例を対象に睡眠ポリグラフによる睡眠時無呼吸の検出を行い、ACATによるCVHRと比較した。CVHR ≧15/時を基準とすると、AHI≧15の睡眠時無呼吸患者が感度88%、特異度98%で検出され、検出力は肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、自律神経機能障害の影響を受けなかった。臨床応用としては、急性心筋梗塞発作後にホルター心電図検査と抑うつの診断を行った716例を対象にCVHRを検出し、その後の生存率について中央値25か月間の追跡を行った。CVHR≧15は、うつ病を有する人では死亡のリスクであるが、非うつ病者では死亡のリスクと関連しないことが分かった。さらに、心筋梗塞後発作後の死病率の予測には、CVHRの頻度よりも、CVHRに伴うR-R間隔変動の振幅の低下がより強力な予測因子であることが分かった。
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