研究課題/領域番号 |
23591056
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
竹本 恭彦 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20364002)
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研究分担者 |
葭山 稔 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30240956)
廣橋 一裕 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00145799)
東 純一 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (30144463)
藤尾 慈 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20359839)
前田 真貴子 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (70461168)
南畝 晋平 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (40467527)
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キーワード | 喫煙 / 血管障害 / ニコチン依存度 / トロンボスポンジン / 血管内皮機能 |
研究概要 |
我々は、CYP2A6遺伝子多型やα4ニコチン型アセチルコリン受容体多型がニコチン依存度に関連することを見出したが、これら遺伝子多型の差異と血管障害度の関連性は明らかではないため、検討を行った。また、血管内皮NO産生能にThrombospondin-1(TSP1)が関与しており、TSP1の喫煙による血管障害度への関与の検討を行った。 禁煙外来を受診した連続167例を対象に検討を行った。年齢57.3±13.0 歳、一酸化炭素濃度17.3±10.6 ppm、ニコチン依存度テスト7.71±1.63 点、血管内皮依存性血管拡張反応(FMD)4.31±2.48%、であり、重回帰分析の結果、収縮期血圧、空腹時血糖値がFMDにて評価した血管障害度と有意な関連性を認めた(標準化係数ベータ(-0.18, -0.17)、有意確率(p=0.04, p=0.03))。 連続167例中95例において禁煙5か月後のFMDの評価を終了した。FMDは、4.12±2.16%から4.64±2.29%へと有意な増加をみとめた(p=0.023)。 禁煙5か月後のFMD評価を終了した95例中28例において、1年後のFMD評価を終了した。FMDは、禁煙前4.30±1.85%、1年後4.62±2.77%であり、有意な増加を認めなかった(p=0.55)。禁煙5か月後の4.91±2.45%と比較しても、1年後は有意な増加を認めなかった(p=0.59)。 TSP1血中濃度は167例中75例において計測を終了し、禁煙前2.08±1.87 ng/ml、禁煙5か月後1.89±2.09ng/ml、であり、有意な変化を認めなかった(p=0.913)。167例のうち、CYP2A6遺伝子多型解析を終了した39例においてCYP2A6と血管障害度につきロジスティック解析を行ったが、現時点ではCYP2A6と血管障害度の間には有意な関連性を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、CYP2A6遺伝子多型やα4ニコチン型アセチルコリン受容体多型がニコチン依存度に関連することを見出したが、こうした遺伝子多型の差異と血管障害度の関連性は明らかではなく、検討を行った。また、血管内皮NO産生能にThrombospondin-1(TSP1)が関与しており、TSP1の喫煙による血管障害度への関与の検討を行った。 連続167例において、既往歴、現在の服薬状況、年齢、性別、喫煙歴の聴取、身長、体重の測定、呼気中一酸化炭素濃度測定、禁断症状調査、ニコチン依存度テスト、ファガストロームテストを施行した。また、連続167例において、高解像度超音波装置を用い、駆血による血流増加刺激前の上腕動脈の血管径と血流の測定と収縮期血圧より高い圧で一定時間駆血したのちに開放し血流増加に伴い拡張した上腕動脈血管径の計測から血管径の変化率を算出し、血管内皮依存性血管拡張反応評価を行った。また、ニトログリセリンによる血流増加刺激前の上腕動脈の血管径と血流の測定とニトログリセリン投与を行うことで生じた血流増加に伴い拡張した上腕動脈血管径の計測から血管径の変化率を算出し、血管内皮非依存性血管拡張反応評価を行った。 上記の血管内皮依存性血管拡張反応評価と血管内皮非依存性血管拡張反応評価による血管機能評価は、禁煙治療開始前は連続167例全例にて終了した。167例中95例において禁煙治療開始後5ヶ月後の血管機能評価を終了し、95例中28例において禁煙治療開始後1年後の血管機能評価を終了した。 TSP1血中濃度は167例中75例において、禁煙前と禁煙後5か月後の計測を終了した。 primer extension法、PCR-RFLP法、direct sequence法によるCYP2A6遺伝子多型解析は、167例中39例において解析を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
167例中95例において、禁煙治療開始前と禁煙治療開始後5ヶ月後の血管内皮依存性血管拡張反応評価と血管内皮非依存性血管拡張反応評価による血管機能評価を終了した。今後継続して、禁煙治療開始後5ヶ月後における血管機能評価を施行していく。また禁煙治療開始後5ヶ月後の血管機能評価を終了した95例中28例において、禁煙治療開始後1年後の血管機能評価を終了した。今後ひきつづき、1年後の血管機能評価を施行していく。 また、ニコチン依存度や喫煙量と喫煙による血管障害度は必ずしも相関しておらず、血管障害が生じる程度に個人差が認められる。このような個人差が生じる機序にthrombospondin-1(TSP1)遺伝子多型が関与する可能性がある。現時点の検討結果では、禁煙前に比べ禁煙後にTSP1濃度の有意な変化を認めなかった。TSP1濃度変化と禁煙に伴う血管機能改善の関連性につき、今後さらに解析例数を増やし検討していく。 primer extension法、PCR-RFLP法、direct sequence法によるCYP2A6遺伝子多型解析は167例中39例において実施し、解析を終了した。CYP2A6遺伝子多型と血管障害度につきロジスティック解析を行ったが、現時点ではCYP2A6と血管障害度の間には有意な関連性を認めなかった。今後継続して、CYP2A6遺伝子多型解析を施行していく。また、α4ニコチン型アセチルコリン受容体遺伝子多型がニコチン依存度に関連することを見出しており、今後α4ニコチン型アセチルコリン受容体遺伝子多型についても遺伝子多型解析をすすめ、喫煙による血管障害度との関連性についても検討をすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度も禁煙に伴うthrombospondin-1(TSP1)血中濃度の変化を解析し、その変化と血管内皮機能変化との関連性を発表する予定であった。しかしながら、解析例数が進むに従い、TSP1血中濃度変化が平成23,24年度に実施してきた結果から予想された変化よりも予想外に小さいことが判明してきた。また、それに伴い、喫煙による血管障害の程度の個人差との関係や血管内皮機能変化の機序との関係においても、有意な関連性が現時点では得られないことが判明した。そのため、計画を変更し、他の喫煙による血管障害の程度の個人差や血管内皮機能変化と関連する可能性のある生理活性物質の解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。 他の喫煙による血管障害の程度の個人差や血管内皮機能と関連する生理活性物質の解析と血管内皮機能変化の関連性については、次年度に発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることにする予定である。 167例中95例において、禁煙治療開始前と禁煙治療開始後5ヶ月後の血管内皮依存性血管拡張反応評価と血管内皮非依存性血管拡張反応評価による血管機能評価を終了しており、今後継続して、禁煙治療開始後5ヶ月後における血管機能評価を施行していく。また禁煙治療開始後5ヶ月後の血管機能評価を終了した95例中28例において、禁煙治療開始後1年後の血管機能評価を終了しており、今後ひきつづき、1年後の血管機能評価を施行していく。CYP2A6遺伝子多型解析は、167例中39例において実施し、解析を終了しており、今後ひきつづき、解析、検討をすすめる。
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