研究課題
動脈硬化を基盤とする心筋梗塞は約半数が前駆症状なく突然発症し、突然死へとつながるため、その予知因子の解明は世界的に重要な課題である。われわれは近年進歩の著しい心臓核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging; MRI)、およびMR血管撮影(MR angiography; MRA)を用い、非侵襲的に冠動脈内腔、およびプラークの描出に成功している数少ない施設である。MRI上高信号を呈するhyperintense plaqueの特徴は頸動脈領域ではプラーク内出血、および脳梗塞のリスク因子として数々の論文報告があるが、冠動脈におけるhyperintense plaqueの意義については不明である。今回われわれは冠動脈の血管壁に認めるhyperintense plaqueの特徴を血管内イメージングである光干渉断層映像(OCT)と比較したところ、血栓、脂質コア、新生血管、および炎症細胞であるマクロファージに代表される不安定プラークの特徴と強い関連性を呈することを示し、学会にて報告している。また、MRI上hyperintense plaqueに対し冠動脈ステント留置を施行する際に、末梢塞栓の予測因子となることも見出しており、今後は前向きに末梢塞栓保護デバイスの有無による短期予後の検討を行い予定である。また、MRAを用いて、心不全治療薬である心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の冠動脈径、および冠動脈血流に及ぼす影響を検討し、ANPが冠動脈拡張作用を有することを明らかにし、論文報告している。
2: おおむね順調に進展している
冠動脈MRAを用いたナトリウム利尿ペプチド、およびニトログリセリンの冠動脈血管径や血流に及ぼす影響に関してはすでに論文報告している(Ehara S. Heart Vessels 2012)。また冠動脈MRIによる高信号を呈するプラークは不安定プラークの特徴を有することが明らかとなり、今後はイベント予測のためのprospctive studyを計画中である。
これまでに得られたデータを学会、論文発表をしながら、ご批判をいただき、今後の新たな研究への方向性を探ります。また、自らはこれまでに得られた知見から有用と考えられる前向き臨床研究をすでに立ち上げ、倫理委員会承認後、施行する予定であります。
これまでに蓄積してきたデータの保存ディスク、解析ソフト、また論文発表や学会出席のための費用に充てたいと考えております。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
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