研究課題/領域番号 |
23591057
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
江原 省一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90382150)
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キーワード | 急性冠症候群 / 血栓 / 核磁気共鳴画像 / 光干渉断層像 / 不安定プラーク / 冠動脈 / 動脈硬化 |
研究概要 |
生活様式の欧米化による肥満を基礎とした、高血圧、耐糖能異常、脂質代謝異常を伴ったメタボリックシンドロームの台頭により、動脈硬化病変とそれに基づく病的血栓形成を発症原因とする急性冠症候群 (ACS;acute coronary syndrome)や脳梗塞などの心血管イベントの予知因子の解明は世界的に重要な課題である。われわれは近年進歩の著しい心臓核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging; MRI)、およびMR血管撮影(MR angiography; MRA)を用いて、非侵襲的に冠動脈内腔、プラーク、および血流速情報を得ることに成功している数少ない施設である。さらにわれわれの施設の特徴は、MRIにより得たプラーク情報を侵襲的ではあるものの臨床使用上その安全性・有用性が確立している血管内光干渉断層映像(OCT)と比較検討できることにより、より詳細にMRIによる不安定プラークの非侵襲的同定法の解析が可能なことにある。MRIにて高信号を呈した冠動脈プラークはOCT上の血栓、脂質コア、新生血管、、および炎症細胞であるマクロファージに代表される不安定プラークの特徴と強い相関を呈することを示し、学会報告はもちろん、論文も近日中に提出予定である。 また、MRAを用いて、心不全治療薬である心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の冠動脈血管径、および冠動脈血流に及ぼす影響を検討し、ANPが心拍などに影響を与えず、冠動脈拡張作用を有することを明らかにし、すでに論文化されている。 上記成果より、新たに冠動脈MRIが心血管イベント予知、および冠動脈形成術の際の末梢塞栓予知に応用できるかについて、すでにプロトコールを作成し、倫理委員会に提出済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冠動脈MRAを用いた心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、およびニトログリセリンの冠動脈血管径、および冠動脈血流に及ぼす影響に関してはすでに論文化されている(Ehara S. Heart Vessels. 2013;28:596-605)。また冠動脈MRIにより高信号を呈する冠動脈プラークのOCT上の特徴を明らかにし、不安定プラークと強い関連があることを示している。最終的な論文もまもなく提出できる段階まで完成しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
論文提出、および学会発表を通じて、さまざまなご批判、意見を参考に今後新たな研究の方向性を探ります。すでに、冠動脈MRIにより心血管イベント、および冠動脈形成術中の末梢塞栓による心筋傷害の予知・予防に関する前向き試験を立ちあげ、倫理委員会の承認を得て、すでに取り掛かっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に冠動脈MRIと心臓カテーテル検査での光干渉断層像との比較検討、および経皮的冠動脈形成術中の末梢塞栓の予測因子を探る研究の最終分析を行い、その結果をもとに学会にて発表、および論文発表予定であったが、当初の予定より解析に時間を要し、未使用額が生じた。 このため、冠動脈MRIと心臓カテーテル検査での光干渉断層像との比較検討、および経皮的冠動脈形成術中の末梢塞栓の予測因子を探る研究の最終分析、および論文、学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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