研究課題/領域番号 |
23591058
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
今西 敏雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (00285389)
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研究分担者 |
尾崎 雄一 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00507999)
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キーワード | 急性冠症候群 |
研究概要 |
単球は急性冠症候群の発症に密接に関与しているが、最近の研究により単球は多様性を有することが明らかになっている。一方、単球の活性化は血栓形成に関与するP-selectin glycoprotien-1(PSGL-1)の発現増強に関与することが明らかにされているが、その病態的意義は不明である。 当該年度、我々は特定の単球サブセット上のPSGL-1の増強が血栓形成に関与するか否かを検討する臨床研究を行った。対象は急性心筋梗塞患者25名、不安定狭心症患者20名、安定狭心症患者35名、健常人20名であった。3つの異なる単球サブセットおよびPSGL-1の発現をフローサイトメトリー法で測定した。責任冠動脈の病変形態(血栓を含む)はoptical coherence tomography (OCT)で評価した。AMI群のCD14++CD16+単球上のPSGL-1発現は他の群に比し有意に高値であった。また興味深いことにCD14++CD16+PSGL-1+単球の発現増強は冠動脈プラーク破裂の頻度と有意に関連していた。更に自然免疫反応の際に中心的に作用するToll-like receptor (TLR)4との関連を検討したところ、CD14++CD16+上のTLR-4の発現はPLSG-1の発現と有意な正相関を呈することを明らかにした。 以上よりCD14++CD16+単球上のPSGL-1の発現増強効果はプラーク破裂後の血栓形成に関連していた。このPSGL-1の発現増強には自然免疫反応が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究課題の作業仮説は、”特定の単球サブセットは冠動脈プラーク破裂部位において、自然免疫反応を介して種々の程度に活性化され、その破裂部位の血栓形成に関連する”である。当該年度、冠動脈プラーク破裂とその後の血栓形成、および急性冠症候群の発症機序に関することを目標にしした。我々は当該年度において、CD14++CD16+単球上のPSGL-1の発現増強効果はプラーク破裂後の血栓形成に関連することを明らかにし、当初の目的を達成した。従って、本作業仮説の妥当性が示唆され、今後の予定を変更・修正することなく進めていけるため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究体制は研究代表者1名と研究分担者1名、および研究協力者3名の構成を維持する。 今後症例を重ねて、単球サブセット、TLR-4, PLSG-1のクロストークによる増強効果の病態的意義をより詳細に明らかにする予定である。 また、基礎研究についても遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスに深部静脈血栓モデルの作成を進めている。準備環境が整い次第、分子生物学的機序の比較・検討に関する研究を施行する予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床研究においては、上記のように単球サブセット、TLR-4, PLSG-1のクロストークによる増強効果の病態的意義をより詳細に明らかにする予定である。これらの研究を遂行するために、生化学的関連試薬、フローサイトメトリー関連試薬および免疫関連試薬を研究費として使用する予定である。 基礎研究に関しては遺伝子欠損マウスおよび深部静脈血栓モデルを作成し、血栓形成と単球サブセットの関連を分子学的観点より解明していく予定である。この基礎研究を遂行するために、培養関連試薬、生化学的試薬および遺伝子解析関連試薬を研究費として使用する予定である。
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