研究課題/領域番号 |
23591060
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
馬場 彰泰 北里大学, 付置研究所, 研究員 (60296572)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 拡張型心筋症 / 重症心不全 / アフェレシス / 免疫吸着療法 / 心筋自己抗体 |
研究概要 |
国内治験と併行して実施予定だった臨床研究に関しては、第29回高度医療評価会議(平成24年2月3日)では一定の評価をうけたものの、本年度中に研究を着手することはできなかった(当該研究費分は次年度へ繰越とした)。しかし昨年度に報告済(拡張型心筋症に対する免疫調整療法、基盤研究C)の、計3クール心不全アフェレシス治療歴のある拡張型心筋症例が、心抑制性抗心筋自己抗体の再上昇とともに重症心不全をきたしたため、本年度に第4クール目のアフェレシスを実施した(平成24年5月現在外来通院中)。その際の患者血液も含め、過去国内で治験前に心不全アフェレシス治療を行った計7例のべ10クールの免疫吸着療法前後のペアー血清を使用し、予定された以下の基礎的研究をおこなった。すなわち、protein active arrayにより未知タンパクを含めた自己抗原種の同定を第1に実施した。各クールの治療効果(左室駆出率が少なくとも5%以上増加したか否か)によって、治療上重要な意義のある自己抗原種かをサブトラクション法によって同定したところ、新規抗心筋自己抗原としてタイチンが存在することが明らかとなった。少数例での検討では、抗タイチン抗体は年齢にかかわらず心不全が重症な症例ほど検出され、心不全アフェレシス治療の奏功例を選択する簡便なマーカーとなりうることから、次年度以降も検討を継続する予定である。第2の基礎的研究として、ある種の心筋細胞イオンチャネル(現段階では非公開)に対する心抑制性抗心筋自己抗体の特異的作用を確認するために、補体不活化による影響、プロテインG前吸着による影響を実験した。自己抗体の有する陰性変力作用は補体不活化による影響はうけず、プロテインG前吸収では完全消失した。次年度は、自己抗体をFabならびにFc部に切断・添加することで同作用が変化しないか確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基礎的研究は予定どおりであるが、臨床研究は(評価療法として実施する予定であったため)高度医療としての許可が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
高度医療評価会議につづき、先進医療専門家会議においても、高度医療として認められれば、臨床研究に着手できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、基礎研究と臨床研究を併行してすすめていく。まず当院で治験前に心不全アフェレシス治療を行った計7例のべ10クールの免疫吸着療法前後のペアー血清を使用したプロテインマイクロアレイ解析では、新規発見した抗タイチン抗体の特性を検討することで心不全アフェレシス治療のバイオマーカーとならないか検討する。具体的には、自己抗原の前吸収実験によって心抑制性特異性を確認するとともに、IgGサブクラスによる効果差、心筋自己抗体と心筋細胞間の結合形態の解析( FabならびにFc部に切断・添加することで同作用が変化しないか確認する実験)を行う予定である。あわせて引き続き「心抑制性心筋抗体」の測定を継続することで、治験対象外患者や、治験終了後に再治療が必要となった症例に対する、アフェレシス治療を考慮する。特に治療奏功例と考えられた症例に対しては、先進医療(高度医療)として臨床研究を本年度中に開始する。予定される研究進度については以下のとおりとする。1.基礎研究:心不全アフェレシス治療の対象となりうる症例に対して、全例で抗心筋自己抗体の事前測定を実施する。具体的には、心抑制性抗心筋自己抗体、ミオシン抗体、抗β1アドレナリン受容体抗体、抗M2ムスカリン受容体抗体、抗心筋トロポニンI抗体を測定対象とする。同時に自己抗体IgGのサブクラスを含めた測定も行い、拡張型心筋症以外の重症心不全患者全般における液性免疫異常の実態を明らかとする。2.臨床研究 :本年度中に本邦治験結果がまとまる予定であるため、上記プロセスにより選定された治療奏功予想例に対して、心不全アフェレシス治療を継続する。具体的には、HBV陽性のために治験除外された拡張型心筋症例、心抑制性抗体を有する非DCM重症心不全例(心サ、虚血性心筋症など)を想定しており、特に心抑制性抗体が陽性の症例に限定する。
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