研究課題/領域番号 |
23591062
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉川 勉 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (20174906)
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研究分担者 |
香坂 俊 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (30528659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 急性心不全 / レジストリ |
研究概要 |
本研究の目的は、我が国における急性心不全(AHF)のデータベースを樹立し以下のことを明らかにすることである。1. 背景となる因子の病態・疫学を明確にする。2. 急性心不全治療法の現況とガイドライン尊守の実態を把握する。3. 日常臨床で使用されているBiomarkerと予後を明らかにする。 そのためには、西洋諸国と比較できる国際水準のAHF症例登録用ソフトを開発する必要がある。登録率を高め、かつ登録する医療関係者の労力を最小限に抑えるためには、インターネットを利用することでどの医療施設からでも速やかに情報収集が可能になると考える。さらに、インターネットを通じてデータの解析結果を各医療施設はもとより一般にも適正な形で開示することで最新の情報を共有することが可能となる。 予後最終調査は退院後二年間まで追跡し、その二年間の間に当大学病院および複数の関東圏内の主要な循環器関連施設からのデータ収集体制を確立する。データの集積が千人規模に到達した段階で、重症度を考慮に入れた危険度補正死亡率(Risk Adjusted Mortality)の算出も可能となる。入院中の短期的な予後の評価や中期、遠隔成績の把握は重要な診療情報であり、また国民に還元されるべき情報でもある。これらを大規模で正確に把握するためには、アンケート形式での調査ではきわめて困難であり、レジストリというデータベース形式にて"正確"で"妥当"な指標を把握する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在各施設で50~100名程度の登録を行い、主な問題点について話し合いを行い、逐次アップデートを行なっている。また、各施設それぞれ1名のデータマネージャー(DM)を選出し、データ収集と各項目のvalidationに責任を持つこととした。 さらに、データベースフォーマットソフトの作成を行い、ファイルメーカーベースでDropdown方式を多用し、手軽に入力できるものとした。また、外れ値に関しても自動的にピックアップできるようなプログラムを内包することとし、事前に入力エラーを予防する。これを各施設に配布し、使用している。 入力項目の選定はデータベースの質を決定する上できわめて重要であった。平成23年度内に2度のデータベースミーティングを行い、大項目(1)~(4)の選定を行った。(1) 術前の患者背景、生年月日といった基本情報、(2) 入院時の身体所見やバイタルサイン、検査所見、(3) 治療の内容、その後のBiomarker値(BNP、TNT、hsCRPと決定)、(4) 予後、合併症の有無(退院後二年間の再入院率および死亡率)。 中長期的なフォローアップに関してはまだこれからであるが、世界的にも様々な形で試行錯誤が行われている。我が国においては、国民の移動が国内に限定されることが多く、比較的に追跡調査を行いやすい環境にあるといえる。また、心不全の遠隔成績を得ることは、その後の診療や手技の選択にあたってきわめて有用な情報になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、米国データベース会議への参加と情報の収集を常に行う。世界と共通の土俵でデータを管理するためにはアップデートされた情報を逐次入手する必要があり、全米より主要な研究者が集う米国データベース会議を活用して関係者と情報の交換を行い、発展的なデータベースの運用を目指す。さらに、主要学会(日本循環器学会、日本心臓病学会)期間中等に心不全データベースワーキンググルーブ会議とデータマネージャー会議を開催し、入力説明と結果のフィードバック、そして入力項目の選定や追加などを行うものとする。なお、Web Baseが稼働する平成21年度後半からの参加施設については、Web Baseにてテスト期間を設け、入力に慣れた段階で参加する予定にする。入力フォームの不具合、項目の定義の微調整、入力プログラムの改良、といったハード面のメンテナンスを並行して行う。また、ハード面だけでなく、データの取り扱い管理法、臨床研究への応用方法、公表形式といったソフト面の規約を作成・整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は症例の登録のみで、全症例の解析を行うまでにはいたらず、繰越が生じた。本年度400例前後を集計した後に、解析を行う予定である。得られたデータの解析は、最初の数年は、基本統計量の算出にとどめ、大まかな傾向が統計的な意味を持って見えてきた段階で治療前重症度補正死亡率を算出し,医療の質向上に有用な施設レポートを参加施設に配布する。本研究ではUMINをサーバーとし、インターネットを用いたデータ入力、validation、公表を行うこととしにより、データ収集の手間と経済性、正確性が大幅に改善されると考えられる。また、こうしたフォーマットを用意することによって二次的に臨床治験や他の心疾患のレジストリとして活用されることも期待される。
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