研究目的と研究計画:本申請研究では、都内職域コホートの3年間の追跡研究において血管障害指標(上腕―足首間脈波速度、圧脈波解析にてaugmentation index、中心血圧)のいずれが血清クレアチニンおよびCyatatinCで評価される軽症腎機能障害進展予測に有用であるかを検討した。平成20年度および平成23年度に職域コホートを対象と上記指標を測定している。 成果1:3年間の腎機能の変化と血管障害指標の関連:2258例において3年の経過で血管障害指標、腎機能指標の再測定が可能であった。クレアチニン算出糸球体濾過率の変化は85から83 ml/min./1.73m2であり、CystatinC算出糸球体濾過率の変化は98から97 ml/min./1.73m2で両者とも有意に低下した。しかし、観察開始時血管障害指標は糸球体濾過率の変化と有意な関連を示さず、腎機能増悪を推測することは困難であった。 成果2:血管障害指標、腎機能障害指標と高血圧発症の関連:高血圧は心血管疾患の最も重大な危険因子であり、その発症・増悪予防は重要課題である。血管障害、腎機能障害は血圧上昇の増悪因子であるが、血圧上昇早期への両病態の関与は十分明らかでなかった。本申請研究では1229例の正常血圧男性において3年後に127例が高血圧を発症した。この発症予測には中心血圧(Odds比2.16)とCystatinC(Odds比1.39)は有意な独立した高血圧発症予測指標であることが確認された。 研究結果の意義:高血圧発症・増悪予防には生活習慣改善の介入が重要である。しかし、その対象例数は甚大であり、発症・増悪リスクの高い症例を選別し、積極的介入を実施することも対策の一つとなる。本申請研究にて中心血圧、血清CysytatinCは高血圧発症リスクの高い症例を選別する有用な指標であることが確認された。
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