研究概要 |
Lp(a)コレステロールの臨床的意義を評価するために臨床研究と基礎研究の両者を並行して研究を実施した。 臨床研究としては健診ドックを受診した男性対象者212名について、HPLCリポ蛋白定量法を用いてリポ蛋白分析を行った。Lp(a)は本来LDL粒子と関連することからLp(a)コレステロールとLDLコレステロールが相関をすることが予想されたが、r= 0.093と全く相関はなかった。一方、IDLコレステロールおよびVLDLコレステロールに対して、それぞれr= 0.188 (p< 0.01)およびr= 0.184 (p< 0.01)とLp(a)コレステロールは有意に相関した。また興味深いことにカイロミクロンコレステロールがr= 0.28 (p< 0.0001)とLp(a)に顕著に相関していた。したがって、Lp(a)コレステロールはTGリッチリポ蛋白のコレステロールと有意に関連することが判明した。またこれを支持するようにHDLコレステロールはLp(a)コレステロールと有意な逆相関を示した(r= -0.191, p< 0.01)。フラミンガムリスクスコア(Framingham Risk Score、FRS)との相関分析を行ったところ、non HDL-CはFRSと有意な正相関を示すが、その説明因子としてはLp(a)コレステロール濃度はr= 0.1419 (p= 0.039)と僅かな有意相関に留まった。一方、Lp(a)コレステロールは尿酸値と顕著な正相関を示しており、新たなる課題が生じた。基礎研究としては、血管内皮細胞(HUVEC)におけるLp(a)コレステロールのMMP-2とLR-11分泌に対する影響を検討するために、まずHUVECのMMP-2分泌に対するTNF-αおよびアンジオテンシン2(Ang2)の影響について実験系の確立を試みた。Ang2はMMP-2を増強し、Ang2受容体拮抗薬はその効果を打ち消すことから、Ang2の効果はその受容体を介して発揮されていた。同じ系でLp(a)もMMP-2を増強する傾向がみられたが、その再現性とメカニズムを究明している。
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