【目的】心筋再生療法として血管増殖因子やケモカインを用いた分子治療が進められてきたが、単一のタンパクや遺伝子を標的とした分子治療には限界がある。そこで我々は心筋において血管新生を統合的に抑制していることが知られているマイクロRNA-92aを標的とした心筋再生医療を試みた。【方式】ラットの左冠動脈を結紮して心筋梗塞を作成し、梗塞巣にアンタゴミア92a含有生体吸収性ゼラチンハイドロゲルパッチ(Ant-92aパッチ)を逢着した。Bromodeoxyuridine (BrdU)を取り込んだCD31陽性内皮細胞、c-kit陽性心筋幹細胞およびα-actinin陽性心筋細胞数を測定し、血管新生と心筋再生の程度を評価した。心筋梗塞14日後に超音波心エコーによって心機能を評価し、マッソントリクロ―ム染色にて梗塞瘢痕組織の面積を測定した。【結果】:Ant-92aパッチはパッチ単独またはAnt-92aのスクランブルオリゴヌクレオチドを含有したパッチと比較して梗塞巣においてBrdUを取り込んだCD31陽性内皮細胞を著明に増加させた。それに伴い、BrdUを取り込んだc-kit陽性心筋幹細胞とα-actinin陽性心筋細胞の梗塞巣への集積が有意に増加した。その結果、Ant-92aパッチ群では梗塞瘢痕組織は有意に縮小し、左室機能は有意に改善した。【考察】Ant-92aパッチは心筋梗塞後の血管新生と心筋再生を促し、心筋再生医療として有用であることが示唆された。
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