研究課題/領域番号 |
23591072
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
田原 宣広 久留米大学, 医学部, 講師 (10320186)
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研究分担者 |
石橋 正敏 久留米大学, 医学部, 教授 (20168256)
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キーワード | FDG-PET / 多列化CT / 炎症 / 冠動脈 |
研究概要 |
平成23年度は、冠動脈近位部にステントを留置した症例を対象にFDG-PET/多列化CT検査を施行し、ステント留置部のFDG集積の評価が可能であるかどうか検討したが、心筋のFDG集積が認められる例が存在し、冠動脈領域のFDG集積の評価を困難にすることがあった。ヘパリンは、血中の遊離脂肪酸を上昇させ、心筋のエネルギー基質をブドウ糖から脂肪酸へシフトすると考えられている。平成24年度の検討では、FDG投与前にヘパリン50 IU/kgを静脈し、静注前、10分後、60分後、120分後の血糖値、インスリン値、遊離脂肪酸値を計測した。その結果、ヘパリン投与により血糖値やインスリン値は著変を示さないが、ヘパリン静注10分後から120分後まで、静注前と比べて有意に遊離脂肪酸が上昇することが確認された。しかしながら、ヘパリン前投与による遊離脂肪酸の上昇では、心筋のFDG集積を抑制することは困難と考えられた。心筋のFDG集積は、、冠動脈における関心領域のFDG集積を計測する上で大きな影響を与え、今後の研究を遂行する上で重要な問題点である。そこで、研究が当初計画どおりに進まない時の対応として初期計画に挙げているように、心筋集積に影響を受けることが少ない左冠動脈主幹部を評価ターゲットにすることとした。しかしながら、左冠動脈主幹部ステントを留置する例は限られており、血管内視鏡での評価は困難な例が多く、左冠動脈前下降枝、または回旋枝にステントを挿入した例でも左冠動脈主幹部のFDG集積を評価した。FDG集積の評価が可能であった例においては、FDGの集積程度が強い例ほど、慢性期の冠動脈造影においてステント部位における狭窄度が強く、血管内皮機能が低下しており、ステント留置局所の炎症が関与していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FDG集積の評価が可能であった例では、FDG集積強度をstandarized uptake value (SUV)を用いて定量化した。下大静脈相のSUV値を計測し、冠動脈における関心領域のSUV値を静脈SUV値で除した値をtarget-to-background ratio (TBR)として算出した。その結果、ステント留置部や左冠動脈主幹部のTBRが高い例ほど、慢性期の冠動脈造影においてはステント部位における狭窄の程度が強く、アセチルコリン負荷による血管内皮機能が低下していた。ステント留置局所のみならず、狭窄を認める冠動脈全体の炎症がこれらの結果に関連していることが推察された。症例数を増やし、さらなる検索を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のごとく、ヘパリン前投与のみでは、心筋のFDG集積を完全に抑制することが出来なかった。今後は、心筋集積に影響を受けることが少ない左冠動脈主幹部や右冠動脈を評価対象として、計画を進める予定である。また、対象症例が限られていることから、ステントを挿入しない冠動脈狭窄例に対しても評価を拡大し、スタチンやインスリン抵抗性改善薬などによる薬物介入で炎症を制御することにより、冠動脈の分子病態がどのように変化するかも検討を試みる予定である。 現在までの所、対象症例において急性冠症候群や遅発性血栓症の発症は認められていないが、遅発性ステント圧着不良を認める例が出現してきている。観察期間を延長して検討を継続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
心筋FDG集積が対象血管の評価を困難にし、症例数を重ねることができなかった。今後は、評価血管のターゲットを絞り、ステント留置例以外にも対象症例を拡大する予定である。今後は、前述の方策により症例数を重ね、高感度CRPを含む炎症マーカーや血管内皮機能マーカーを症例登録時と慢性期に測定するために外注検査、ELIZA kitや試験試薬に対して研究経費を計上していく方針である。
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