研究課題/領域番号 |
23591074
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
宮本 昌一 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第2研究部, 研究員 (30435557)
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研究分担者 |
野原 隆司 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第2研究部, 研究主幹 (80180769)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 加速ベッド / 血管内皮機能 / メタボリック症候群 / 慢性心不全 |
研究概要 |
本研究では、メディカルエレクトロニクスを利用した医療技術によって新しく開発された加速ベッドによる非侵襲的治療が狭心症を改善することは証明出来たが、心血管疾患の連鎖において狭心症よりもっと病初期のメタボリック症候群やマルチプルリスクファクターを有する患者における血管内皮機能異常や、さらには狭心症、心筋梗塞が進行した一つの病態である心不全をも、この加速ベッドが改善する可能性があるかどうかを検討することを目的とする。 このことを検討するため、メタボリック症候群や心不全の症例をリクルートしているが、第2世代加速ベッド(第1世代より音も静かで患者の治療コンプライアンスが著しく改善するツールになっている)をマイアミ大学Sackner博士より特に心不全治療プロトコール施行としての臨床研究目的で2台貸与を受ける手続きに時間を要した。まずは英語版の研究プロトコール作成に時間を要し、米国での臨床研究の認可を受ける手続きをとった。続いて、船便で加速ベッドを日本へ輸送するのに約1ヶ月以上を要し、さらに厚生労働省より医療機器として医師が個人輸入することをご認可頂いてようやく当院へ平成24年1月中旬に運び込まれることとなった。このため、今年度の心不全治療のエントリーは1例のみでしかも患者さんが是非治療群の加速ベッドをお願いしたい、ということであったので無作為化によるエントリーとはならなかった。この患者は74歳男性拡張型心筋症による左室駆出分画27%の低左心機能であった。治療によりみかけの臨床症状に著変はなかった。ただ、治療後に血管内皮機能の指標であるReactive hyperemia indexが1.27から1.43へと軽度改善し、採血上も血管内皮機能指標Neuregulinが感度以下から測定値可能域まで改善した。また、6分間歩行も247mから276mへと軽度改善し、一定の効果が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り、加速ベッドの搬入に時間を要した。当治療ツールの施行にあたってメタボリック症候群患者は未病に近い状況で患者の病識が乏しく治療の承諾を得るのが困難であった。さらに、心不全患者に対しては、低温サウナを利用した和温療法も当院で実施していて、重症心不全患者の治療選択肢の多いこともあり、エントリーは1例にとどまった。他の要因として、加速ベッド治験へのエントリー期間が1-3月の間と非常に短く、本年度は治験の準備や心不全患者の採血による評価基準項目の検討として、血管内皮機能の指標として新しいNeuregulinというペプチドが治療効果判定に使用できるかもしれない可能性を末梢血のELISA法により検討したが、非特異的抗体の存在で過小評価されてしまうこともあって、測定の安定化に時間を要した。実際の心不全患者のがエントリーが少なかったこともあり、約60万円を積み残すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記2題の研究を努めて推進していく。症例エントリー促進の策として、(1)ホームページにおける同加速ベッド治療の紹介のアップデート及び(2)当院心不全患者で和温療法が奏功しない患者に逆に同加速ベッド治療の選択を勧める、という2点で患者のリクルートをさらに進めていく予定である。研究1. 加速ベッドによる治療がメタボリック症候群患者の末梢血管内皮機能を改善させるかを検討する。動脈硬化の高リスクであるメタボリック症候群患者20名を対象とし、10名では加速ベッドによる治療を1日45分週3回、計15回実施し、残りの10名を対照群とする。加速ベッドでの負荷量は毎分120~180回、頭から足の方向に±0.25gの加速度を加える。動脈硬化の初期病変である血管内皮機能異常の代表的指標である末梢血Endothelial Progenitor Cell(EPC)数やReactive Hyperemia Index(RHI)を治療前後で測定する。また、Augmentation Index(AI)と脈波伝播速度(PWV)を治療前後で測定する。研究2. 加速ベッドによる治療が心不全患者の身体活動能力、心臓自律神経活性バランスを改善させるかを検討する。北野病院に入院中の運動困難なNYHA心機能分類II°~III°の中等度~重症心不全患者20名を対象とし、10名には加速ベッドによる治療を1日45分、週5回計20回実施し、残りの10名を対照群(通常の内科的治療)とする。加速ベッドでの負荷量は毎分120~180回、頭から足の方向に±0.25gの加速度とする。治療前後で、身体活動能力の指標として確立されているSAS(Specific Activity Scale)、6分間歩行試験や健康に関連したQOLに関する質問(SF-8)に関する問診を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
エントリー患者の血液検査外注費用 80万円(前年度未使用額を含む)(かつメタボリック症候群や心不全患者の血管内皮機能の新しい指標となり得る検査項目の検討に要する費用含む)消耗品費用 50万円
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