研究課題/領域番号 |
23591075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横式 尚司 北海道大学, 大学病院, 講師 (40360911)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心房細動 / 循環器・高血圧 / 伸展活性化チャネル |
研究概要 |
SHRでは12週齢にて十分な高血圧を呈していることから、16~18週齢のSHRを用いて、(1)左心房圧調節灌流心における心房細動誘発性の検討、(2)左心房圧負荷ラット潅流心の心房筋における膜電位光学マッピングの実験を行った。なお、正常血圧心として同週齢のWistar Kyoto ラット(WKY)を用いた。(1)摘出灌流心の右下肺静脈から圧調節用カニューレを、左下肺静脈から圧センサー用のカニューレを挿入し、残りの肺静脈は結紮した。圧調節用カニューレの圧を変化させることにより、左房圧を調整できるモデルを確立した。心房細動の誘発は高頻度刺激法により行った。【結果】生理的な左房圧(5 mmHg程度)条件下において、SHRでは誘発された心房細動の持続時間が長い傾向はみられたが、WKYと比較して誘発率に有意差を見出すことができなかった。(2)摘出心を膜電位感受性色素 Di-4 ANEPSSで還流した後、ミオシンII特異的阻害薬 Blebbistatineを投与し、電気的活動を残したまま心収縮を停止させた。これにより、心収縮による左房内圧の変化を抑制すること、ならびに、motion artifactを除くことが可能となり、良好な膜電位光学マッピングシステムを確立し得た。心内心電図も記録するため、右室、左房中隔に電極を留置した。また、ペーシング電極を左心耳に留置した。左房内圧を0、5、10、0mmHgと変化させ、それぞれの圧に変化させてから3分後より活動電位波形の記録を行った。【結果】左房圧の上昇に伴い、WKYでは活動電位持続時間(APD80)の変化を認めなかったが、SHRでは延長傾向が認められた。また、WKYと比較してSHRのAPD80は延長している傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に達成しており、平成24年度に予定していた膜電位光学マッピングを用いた実験にも取り組むことができ、一部の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
ChoisyらのSHRを用いた実験(Hypertension 2007)では、線維化をきたした高齢(11ヶ月)のSHRでは心房細動の誘発率が高かったが、心房不応期・単相性活動電位持続時間は正常血圧ラット(WKY)と比較して、変わらなかったと報告している。しかし、我々が用いた比較的若年のadult SHR(4~5ヶ月)では、心房細動誘発率に有意な違いがみられなかった。疫学的には、高血圧、糖尿病といった生活習慣病において、心房細動を発症しやすいことが知られているため、(1)高齢のSHRの使用あるいは(臨床的に意義のある)他のモデル動物への変更、(2)圧負荷(たとえば15 mmHg)を加えた条件での心房細動誘発率の検討を考えている。一方、膜電位光学マッピングでは興味深い所見が得られており、今後も継続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
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