研究課題/領域番号 |
23591075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横式 尚司 北海道大学, 大学病院, 講師 (40360911)
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キーワード | 心房細動 / 循環器・高血圧 / 伸展活性化チャネル |
研究概要 |
平成23年度に確立した左房圧負荷灌流心にて、生理的な左房圧(5 mmHg程度)ならびに圧負荷(10 mmHg, 15 mmHg)条件下に心房細動誘発率、持続時間について検討した。しかし、生理的条件下ならびに圧負荷を加えても、高血圧モデルとして用いたSHRにおいて、誘発された心房細動の持続時間が長い傾向はみられたが、WKYと比較して誘発率に有意差を見出すことができなかった。そのため、疫学的には、高血圧、糖尿病といった生活習慣病において、心房細動を発症しやすいことが知られているため、臨床的に意義のある糖尿病モデルラットを作成し、(1)心房細動誘発性の検討、(2)糖尿病ラット潅流心の心房筋における膜電位光学マッピングの実験を行った。心房細動の誘発は高頻度刺激法により行った。【結果】(1)生理的な左房圧(5 mmHg程度)条件下にて、糖尿病モデルラットにおいて、心房細動誘発率が有意に高く、誘発された心房細動の持続時間も延長していた。(2)摘出心を膜電位感受性色素 Di-4 ANEPSSで還流した後、ミオシンII特異的阻害薬 Blebbistatineを投与し、膜電位光学マッピングを行ったところ、生理的な左房圧条件下でも、糖尿病ラットでは活動電位持続時間(APD)が延長しており、その空間的不均一性が有意に増大していた。また、伝導速度の低下ならびに伝導のばらつきも増大していた。さらに、これらの電気生理学的特性は刺激頻度を増大させると、より顕著になることが判明し、糖尿病ラットの心房細動誘発性機序と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説としていた高血圧心における圧負荷モデルでの心房細動誘発性に有意な差を見出すことができなかった。しかし、そのために確立した実験システムを用いて、臨床的に極めて重要である糖尿病病態の心房細動発生機序に関わる新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病病態での心房細動機序としての(1)活動電位持続時間の空間的不均一性増大、(2)伝導速度の低下ならびに伝導のばらつき増大、をさらに追及するために、①膜電位光学マッピングによる活動電位オルタナンスの解析、②パッチクランプ法によるイオン電流の解析に加えて、③ギャップジャンクションの量的ならびに質的変化の有無、及び、細胞レベルでの分布様式の変化など生化学的・組織学的検討も加える予定である。また、生理的条件下でも心房細動誘発率が高かったが、糖尿病ラットに左房圧負荷を与えることにより、心房細動がより誘発され易くなるのか否かについても検討したい。もしそのような結果が得られれば、伸展活性化チャネル阻害薬による心房細動予防効果についても検討を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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