研究実績の概要 |
左心房圧調節ラット灌流心を作成し、生理的な左房圧(5 mmHg)ならびに圧負荷(10 mmHg, 15 mmHg)条件下に心房細動誘発率、持続時間について検討した。高血圧モデルとして用いた自然発症高血圧ラット(SHR)では、誘発された心房細動の持続時間が長い傾向はみられた。しかし、圧負荷を加えても、正常血圧心(WKY)と比較して心房細動誘発率に有意差を見出すことができなかった。さらに、心房細動基質の形成と密接に関連しているCaMK II活性が高血圧ラットで亢進していることを明らかにした(Mitsuyama H, Yokoshiki H, et al, Am J Physiol 307:H199-H206, 2014)。そのため、疫学的に心房細動を発症しやすいことが知られている他の生活習慣病として、糖尿病に着目した。その結果、糖尿病モデルラットでは、生理的な左房圧(5 mmHg程度)条件下にて、心房細動誘発率が有意に高く、誘発された心房細動の持続時間も延長していた。摘出心の膜電位光学マッピングによる検討では、糖尿病ラットにおいて、右房自由壁(Free wall)、高位右房(HRA)、低位右房(LRA)、右心耳(RAA)の活動電位持続時間(APD)が延長しており、その空間的不均一性(CoV:the ratio of SD to mean)が有意に増大していた。また、伝導速度の低下ならびに伝導のばらつきも増大していた。さらに、これらの電気生理学的特性は刺激頻度を増大させると、より顕著になることが判明し、糖尿病ラットの心房細動誘発性機序と考えられた(Watanabe M, Yokoshiki H et al, Am J Physiol 303: H86-H95, 2012)。
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