研究課題/領域番号 |
23591078
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
蒲生 忠継 金沢大学, 大学病院, 医員 (10579634)
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研究分担者 |
林 研至 金沢大学, 大学病院, 助教 (00422642)
今野 哲雄 金沢大学, 保健管理センター, 助教 (50377389)
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キーワード | 遺伝性不整脈 / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
(1) 遺伝性不整脈症例のサンプル収集:我々はH24年度の1年間に、QT延長症候群10症例、Brugada症候群2症例、若年発症(60歳未満)の心房細動9症例、若年発症(60歳未満)および家族性徐脈3症例のgenome DNAおよび臨床データを新たに集積した。 (2) 遺伝性不整脈の遺伝子変異検索および臨床像の把握:集積した先天性不整脈患者とその家族の末梢白血球よりリンパ球ゲノムDNAを抽出し、遺伝子解析を行った。H24年度の1年間にQT延長症候群およびその家族51人に52種類の遺伝子変異を、心房細動3人に2種類の遺伝子変異を新たに同定した。 (3) 同定された遺伝子変異の実験モデルによる機能解析:同定された原因遺伝子変異のうち心筋イオンチャネル遺伝子について、動物培養細胞に変異チャネルを発現させ、パッチクランプ法で遺伝子変異が臨床病型を引き起こすメカニズムを解明した。H24年度の間にQT延長症候群の3種類の遺伝子変異、心房細動の2種類の遺伝子変異の機能解析を新たに行った。QT延長症候群の変異はいずれも機能喪失変異であり、心房細動の変異は一方が機能喪失変異で、他方が機能獲得変異であった。 (4) ゼブラフィッシュを用いた機能解析:上記の機能解析のために作成した変異遺伝子のcDNAのベクターと、ゼブラフィッシュの受精卵に導入・発現させるための発現ベクターとの入れ替えを行っている。さらに、受精48時間後のゼブラフィッシュ初期胚の心房筋および心室筋の活動電位の測定をパッチクランプ法で試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝性不整脈疾患に対する遺伝子解析については、QT延長症候群と心房細動症例に対して多くの遺伝子変異を新たに同定し、機能解析を行い電気生理学的特徴を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最近QT延長症候群のKCNH2遺伝子変異の機能異常の程度をゼブラフィッシュを用いて比較的簡便に評価する手法が報告された(Jou et al. Circ Res 2013).この手法を用いることによりdisease causing mutationであることを推定する陽性的中率は100%で、陰性的中率は90%であった。我々が同定した15種類のKCNH2変異について同様の検討を行い、その有用性を検討する。 KCNH2遺伝子変異以外のイオンチャネル変異については、これまでと同様に変異遺伝子のcRNAを作成し、ゼブラフィッシュの受精卵に導入・発現させ、パッチクランプ法で心房筋および心室筋の活動電位を測定する。その際、心房筋の活動電位の測定、単一心筋細胞のイオン電流の測定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝性不整脈症例のサンプル収集、遺伝性不整脈の遺伝子変異検索および臨床像の把握、同定された遺伝子変異の実験モデルによる機能解析、ゼブラフィッシュを用いた機能解析を引き続き行うとともに、研究の総括を行う。遺伝性不整脈患者の遺伝子変異の種類、頻度、臨床表現型、および変異遺伝子の機能解析の結果を総括し、遺伝性不整脈の発症機構を明らかにする。機能解析については、従来の方法で解析した結果とゼブラフィッシュを用いて解析した結果を考慮し、臨床表現型との関係を考察する。また、不整脈ゼブラフィッシュを用いて遺伝性不整脈のテーラーメード医療の確立を目指す。研究費の使用用途して、ゼブラフィッシュの管理費、機能解析のための消耗品および旅費を予定している。H24に予定していた機能解析のための研究費の一部を次年度に行う予定としたためそれに伴う費用として次年度に繰り越した。
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