研究課題
下等生物で寿命を延長することが知られる蛋白脱アセチル化酵素SIRT1は酸化ストレスによる細胞死を抑制し(Tanno et al.J Biol Chem. 2007)、SIRT1活性化薬レスベラトロールは拡張型心筋症の動物モデルであるTO-2ハムスターの心不全進展を抑制し、死亡率を低下させた(Tanno et al. J Biol Chem. 2010)。レスベラトロールによる心不全抑制作用は他の心不全モデルであるジストロフィン欠損モデルマウス(mdx)でも観察された。すなわち、心エコー検査により計測した心筋弛緩速度を心筋拡張能の指標として評価するとmdxで観察される心筋拡張障害はレスベラトロールにより改善された。さらに、臨床的に頻度の高い疾患におけるSIRT1活性化薬の将来的な臨床応用が可能かを検討するため、次に糖尿病による心筋障害モデルを用いた。2型糖尿病モデルであるOtsuka Long Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットにおいてカテーテルにより心室内のpressure-volume loopで心機能を評価したところ、安静時には異常を認めなかったものの、Phenylephrineによる圧負荷下では拡張能障害が顕著となった。この拡張能障害にはSERCA2の発現低下や細胞骨格蛋白Titinのアイソフォームやリン酸化状態の変化は関与していなかった。メタボローム解析を行ったところ、OLETFの心筋組織ではphenylephrineによる圧負荷後に対照の心筋組織と比較してATPが34%低下しており、このATPの低下にはAMP deaminaseの活性亢進が寄与していることがわかった。現在、SIRT1活性化薬のレスベラトロール投与が糖尿病心筋代謝に及ぼす影響をメタボロームにより解析中である。
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