研究課題/領域番号 |
23591086
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90199951)
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研究分担者 |
三木 隆幸 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00336405)
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 細胞内情報伝達 / 透過性遷移孔 / 細胞死 |
研究概要 |
ミトコンドリア透過性遷移孔の主要構成タンパクであるミトコンドリア無機リン酸輸送体(inorganic phosphate carrier, PiC)に対する抗体を作製し、虚血再灌流障害におけるPiCと他のmPTP構成タンパクとの機能関連を解析した。その結果、in vivoの実験では、PiCとミトコンドリアマトリックスタンパクであるcyclophilin D (CypD)との結合が、mPTPの開口閾値と強い逆相関関係があること、adenine nucleotide translocase (ANT)とPiCとの結合は虚血再灌流障害の影響を受けないことが示され、CypD-PiC相互作用がmPTP制御に重要であることが明らかとなった。細胞保護シグナルであるPI3K-Akt-GSK-3beta経路の活性化によりCypD-PiC相互作用が減弱しmPTP開口が抑制させることが示された。また糖尿病状態は、ミトコンドリアにおけるunfolded protein responseの亢進を介してPI3K-Akt-GSK-3betaシグナルによるCypD-PiC抑制を阻害することが示唆された。H9c2細胞を用いてmPTP開口をミトコンドリア膜電位の消失を指標に解析したin vitroの実験では、細胞を一過性に活性酸素に暴露することによりmPTPは開口するがその後に再閉鎖すること、ミトコンドリアATP感受性Kチャネルの活性化によりもたらされる細胞保護はmPTPの再閉鎖の促進による可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミトコンドリア無機リン酸輸送体(inorganic phosphate carrier, PiC)に対する抗体の作製と、抗体の特異性、免疫沈降、免疫組織法への応用の可能性について行った予備実験に日数を要したため、研究計画の遂行はやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)の構造タンパクのうちPiCに対する抗体は購入可能なものがないため、研究室で独自に作製したが、その結果、ウェスタンブロットのみならず免疫沈降、免疫組織法にも使用可能な抗体であることが確認できた。この抗体と現在現有の抗体を用いることでmPTPの構造タンパクの相互作用はほぼ網羅的に解析可能である。またプロテオーム解析の方法論として2次元電気泳動と質量解析の応用プロトコールを確立すべく準備を進めている。mPTPの開口閾値をこれまで主に単離ミトコンドリアのカルシウム保持能を指標に解析してきたが、今後は、2種類のミトコンドリア膜電位プローブをを用いて単離心筋細胞におけるmPTPの開口と再閉鎖をモニターすることによって、mPTP閉鎖に関与する分子を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度はPiCに対する抗体は購入可能なものがなかったため、我々の研究室で独自に抗体を作製し、その特異性ならびに各種実験における有用性の検討に多くの時間を要した。その結果当初年度内に予定した実験プロトコールを全ては終了することができず、平成23年度に使用予定であった研究費の全て使用するには至らなかった。平成24年度では、平成23年度に予定していたが実施に至らなかったmPTP制御におけるミトコンドリアALDH2の役割の解析、当初より平成24年度に予定していた1)各mPTP構成タンパクとGSK-3betaとの機能関連、2)CypDとミトコンドリアATP合成酵素との相互作用がmPTP開口閾値に及ぼす影響についての解析を進めるために、平成23年度で未使用分の研究費と平成24年度に請求する研究費を合わせて使用する予定である。
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